ガス室とコーヒー

by 岡崎匡史 July 1st, 2024


From:岡崎 匡史
研究室より

朝の目覚めのコーヒー。
静かな部屋で飲むと精神が落ち着く。

この記事も、コーヒーを飲みながら執筆している。

コーヒーは、15世紀頃、アラビアで飲まれはじめたと云われている。
イスラム教徒が儀式のときにコーヒーを用いた。
コーヒーを飲んで覚醒し、神に触れようとしたのか。

コーヒーハウス


イギリスでは、コーヒーハウスが流行る。

入場料を払い、コーヒー代を飲む度にカウンターで支払う。料金も安く数ペニー。
階級や職業に関わりなく、男性であればコーヒーハウスに入れた。

初対面の相手、多様な背景と経験をもつ人々と会話を愉しむことができたので「ペニー・ユニバーシティ」(Penny University)とも呼ばれた。
 
フランスでは、コーヒーハウスは弾圧の対象にもなった。
なぜなら、噂話から政治談義まで飛び交うからである。

王政や政権に対する不平不満が募り、体制を揺るがしかねない。
「フランス革命」の下火は、コーヒーハウスで燃え上がっていた。
 

ナチス・ドイツとコーヒー


ナチス・ドイツとコーヒーの関係も興味深い。

ドイツ人の看守たちは、ユダヤ人をいかにして毒ガスで殺したのか。

毒ガスのシャワーを浴びせる前に、強制収容されたユダヤ人がいつもと違う気配を察知させたくない。騒動を起こされたら面倒だからである。

囚人たちには、シャワーを浴びた後、コーヒーが待っていると伝えた。収容所にはコーヒーを飲む場所があり、コーヒーの匂いが漂っている。シャワーを浴びると信じ込ませるために、脱衣所を配備し、椅子や洋服掛けも用意する。

囚人は、自分の服をきれいにたたむ。
看守にとって、遺品整理が楽になる。

ユダヤ人たちは疑いを抱かず、ガス室(シャワー室)に入っていった。

 
ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
・臼井 隆一郎『アウシュヴィッツのコーヒー』(石風社、2016年)

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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岡崎匡史

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日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。