宇宙部隊
日本がアメリカと日米安全保障条約を結んでいるように、韓国とアメリカも米韓相互防衛条約を結んでいます。その同盟関係も、統一朝鮮が誕生することとなれば、大きな影響を受けるでしょう。ある著名な研究者は、在韓米軍が撤退する可能性も示唆しております。
これは可能性というよりも、おそらく具体的な選択肢の中に入っているものと思われます。皆さん、トランプ大統領が大好きなスペース・フォース(Space Force)、すなわち宇宙軍ですが、あれは上から朝鮮半島を見ておりまして、もう丸見えなのですよ。だから北朝鮮についての情報はもう筒抜けなのです。やっつけようと思ったら、1日で終わりです。しかしそれを実行すると何百万人、何千万人と死にますし、中国も反撃するでしょうから、やらないのです。
実際のところ、北朝鮮は最近もどんどんとミサイルを撃ちまくっていますが、おそらく米軍は全ての情報やその様子を理解しているのでしょう。日本も情報をもらっているのか、ミサイルが飛んでもほとんど怖がらなくなってしまいました。もちろん、慣れも影響していると思いますが、今の日本人にとってはミサイルよりもコロナの方が恐ろしいのではないでしょうか。
援助の裏側
経済制裁によって一番困るのは一般人です。北朝鮮の人々もとても辛い状況にあるのではないでしょうか。同じような制裁を受けているのは石油王国のイランです。今はコロナにて一日に相当な数が亡くなっているようです。薬もなく大変な状況を迎えております。
ただ、トランプ大統領が北朝鮮をなだめて、金正恩が「それでは核武装を少し下火にしましょう」ということで、大きな進展がございました。そうするとどうなるのか。トランプさんは大喜びで、今度は日本の顔をバンバンと叩き、「さあ、経済援助をしろ」と言います。皆さん、アメリカが北朝鮮に経済援助をするたびに、日本のお金や資源が使われているのです。私はそれを長い間見ていますから、腹が立つやら情けないやら、がっかりしています。
そのことについてマスコミは何も問題視しておりません。ゆえに、ただただトランプさんの業績になっております。「日本がこれだけ助けてあげたのよ」というのは誰も報道せず、北も南も感謝せず、「米国はやっぱりすごい」と世界中から思われているのです。日本国民はそろそろ一言、言わないといけませんね。
撤退後
在韓米軍の数は2万8,000人ほどですが、彼らがいなくなった場合、朝鮮半島における軍事的なバランスは一気に崩れるでしょう。米軍にはもちろん宇宙軍がおります。しかしそれでもなおプレゼンスという点では非常に大きな変化となります。
米軍が引き揚げると、ガッと強気に出てくるのは北朝鮮です。中国も大喜びです。そうすると、米軍のバックがなく人海作戦になった時、韓国は自分たちを自分で守ることができるのか。そこが大問題になります。
北朝鮮からやってくるのは兵隊だけでなく、一般人もやってくるでしょう。「あそこに行ったら食べ物がある」と思い、必死で迫ってくるでしょう。韓国は大混乱になります。
以上のようにいろいろなことを想定すれば、在韓米軍撤退は選択肢としてはあっても、現実的にはほぼ実現し得ないものだと思います。
西鋭夫のフーヴァーレポート
朝鮮半島統一の幻想(2020年4月上旬号)-4
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。