誰がトップになるのか
どのような政体にするか。民主主義なのか、共産主義なのか。国全体の形をどうデザインするのか。国の軍隊についてはどう考えるのか。すでに北朝鮮が有している核については破棄するのか、あるいは持たせておくのか。考えれば考えるほど様々な問題があります。統一朝鮮のトップに、誰がなるかも大問題でしょう。金さんですか、文さんですか。大いに揉めることになります。
どちらの国の貨幣を使うのか。韓国ウォンか、北朝鮮ウォンか。これもまた非常に難しい問題です。そういう時には純金、すなわちゴールド(Gold)が基準になり、例えば「北朝鮮はこれだけ金を持っている、韓国はこれだけ金を持っている。2つ合わせたら、これぐらいの量になるので、これだけお札を刷りましょう」と、そんな形になるのではないかと思っています。
しかしその後も問題です。新しいコインや紙幣を作るとして、そのお札には誰を描くのか、どんな建物や自然を背景に載せるかでも議論になるでしょう。金さんや文さんは載らないでしょうから、何か長い歴史を持っておられる朝鮮半島のシンボルなどになると思われます。
日本はどうなるのか
しかし朝鮮半島で本当に統一への動きが高まった場合、誰がそこにお金を出すのでしょうか。実際にそこで暮らす側の目線で考えれば、この問題が実質的には一番大きな難問であって、多くの人が気になるところだと思います。
30倍以上の格差のある韓国人らが、自分たちの現在の暮らしを放棄してでも、貯蓄を放出するとは考えられません。政府がそれをやろうものなら、韓国人は大反対するでしょう。
経済的な支援を求められるのは日本です。アメリカから殴られ、中国からは脅され、韓国からは「あの時は、あの時は」と過去の問題を引きずり出されながら「お金を出せ」と言われます。日本は「もう今回が最後ですよ」と言ってお金を出すことになるのではないかと思います。
これをずっと繰り返すこととなります。主要な財源は私たちの消費税でしょう。20%ぐらいになるのではないでしょうか。統一朝鮮に一番近い日本が、脇道に逃げられる訳がないのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
朝鮮半島統一の幻想(2020年4月上旬号)-3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。