統一の可能性

by 西 鋭夫 June 20th, 2024

経済格差

韓国と北朝鮮は将来、統一することになるのか。その可能性は限りなく低いと思います。少なくとも、この十数年でどうにかなるような話ではありません。分断はしばらくの間、続くものと思います。

大きな理由の一つは南北間の経済格差です。国民総所得で比較すると、韓国と北朝鮮の間には30倍もの差があります。統一したらどうなるのでしょうか。

皆さん、1990年に西ドイツと東ドイツが統一した際は2倍ほどの違いでした。西ドイツは、この格差を埋めるために大変な努力をしております。当時の西ドイツは日本に次ぐお金持ち国でしたが、東ドイツに対して膨大な額の投資や工場建設などを行いました。1、2年間の話ではなく、おおよそ10年間にわたっての支援です。これでようやく東ドイツだった地域が豊かになっていきました。

 

南北朝鮮

東西ドイツの成功事例を、そのまま朝鮮半島の北と南に当てはめることは出来ません。韓国がお金持ちすぎて、そして北朝鮮が貧乏すぎて、一緒に暮らそうなんてとても無理なのです。

しかも北朝鮮では色々な規制が厳しく、それらを破るとまともに暮らしていくことができないか、あるいは命を失います。そのような状態ですから、仮に38度線がきれいにされて、道路が出来て、汽車もバスも自動車も自由に行き交うことが出来るようになっても、韓国へやってくる人は少ないのではないかと思います。

仮に北から南へと人々がウオーッと押し寄せてきたとしたら、それはそれで大問題となるでしょう。政治的にも、経済的にも、韓国社会は大混乱を起こすはずです。

 

米中の思惑

北朝鮮と韓国でどうにかするという話でもございません。朝鮮半島の地政学的位置を考えてください。もし北朝鮮がなくなってしまうとどうなるでしょうか。あるいはそこに統一国家ができたらどうなるのでしょうか。

在韓米軍はおそらくどこにも行かず、駐軍し続けることになるでしょうから、もし北朝鮮がなくなってしまえば、米国と中国が直接対峙することになるわけです。その中国の背後にはロシアも控えております。北東アジアとはそんな地域なのです。ですから、米中の間では「北朝鮮は潰さない」「緩衝地帯として必要」ということで、話し合いが出来ているのではないかと思います。

ですから、北朝鮮問題はしばらくは解決しないのではないか、と思うのです。



西鋭夫のフーヴァーレポート
朝鮮半島統一の幻想(2020年4月上旬号)-2


この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。