隠れキリシタンと卍

by 西 鋭夫 June 10th, 2024

本来の意味

卍(まんじ)の本来の意味は、めでたさやその兆し、幸運を意味するものでした。仏教においてはまた、卍は光の源とされており、自然界でいえば太陽の存在とされてきました。

ナチスが台頭する前のアメリカでも卍は良い意味で使われておりました。例えば、1910年頃、卍は幸せな状態や幸福、明るさ、といった意味合いで使われており、卍が描かれた旗などもありました。

しかしナチスが使うようになり、アメリカでは誰も使わなくなりました。卍は、悪用や誤用というレベルではなく、恐怖そのもののシンボルとなってしまったのです。

 

隠れキリシタン

キリスト教を信じ、十字架を信じている人はこの卍に十字架を見るといいます。折れている部分を取り除くと十字架が出てくるでしょう。アメリカでこのシンボルが流行った背景には、その隠されたデザイン性もあるのでしょう。

実は日本にも同じようなことが起きておりました。卍は隠れキリシタンたちにとっての救いだったのです。彼らは弾圧を受けておりましたが、それでも信仰を続けていました。家に卍を飾り「私たちは仏教徒ですよ」といって、その卍に十字架を見ながら、お祈りをしていたのです。

観音様はもちろんマリア様です。徳川の怖いおっちゃんたちもそれがまさかキリスト教に関連するものとは思わなかったのでしょう。

 

麻薬

ヒトラーは見事な経済政策でドイツ経済を立て直し、「ヒトラーの奇跡」と呼ばれる好景気を作り出しました。これにドイツ国民は熱狂しておりました。加えて、優秀さと十字架が織り込まれた鉤十字をシンボルにして、国民を一つにまとめていきます。

兵士たちに対してはまた違った方法でその強靭さを実現しました。逆説的に聞こえるかもしれませんが、ヒトラーがここで用いたのは麻薬でした。これが快進撃を続けるナチスドイツの秘密だったのです。

麻薬には様々な効用があります。以前お話ししましたが、ドイツでは普通に麻薬が使われておりました。ドイツ軍の若いお兄ちゃんがお母さんに書いた手紙を見たことがあります。そこには「お母さん、次の慰安袋の中にこれこれを入れてください」と、ドイツで市販されている麻薬の名前が入っておりました。「私はこれがあったらもっと勇敢に働けます」と記されておりました。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
ヒトラーと麻薬(2019年12月上旬号)-6


この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。