不愉快な光景
東京などの大都市に行くたびに不愉快になることがあります。景観です。自動車の数、美しくない高層ビル、街路樹の少なさ、そして電柱と電線のなんと多いことか。
空を見上げて下さい。晴れた日でも綺麗な青空を見ることはできません。都市づくりの基本中の基本だと思うのですが、そこで暮らしている人のことを全く考えていないような景観です。
私が住むスタンフォードには電線も電柱もほとんどありませんよ。隣のパロアルトの町にもありません。見上げると、青空が広がっております。
日本で空を見上げても、電線が網のように走っているし、電信柱が道の両側にあるので、空を広々と仰ぐことはできません。あの電信柱をなくしただけでどれだけ町が美しいでしょうか。道幅もどれだけ広く見えるでしょうか。そういうことに全然お金を使わない日本にうんざりです。日本は美を大切にする国でしょう。
京都の悲劇
日本の美、そのものであった京都も腹ただしいほどに変わってしまいました。私が最初に京都に行ったのは、小学校6年生、12歳の時の修学旅行です。その時の京都は、教科書で習った通りの街並みが目の前にありました。駅も素晴らしかった。1階建ての建物で、世界で一番長い木造の駅でした。
プラットホームに立つと目の前には五重の塔が見えました。今の小汚い駅、歴史も伝統も全く無視したような建物にがっかりです。今では、駅から五重塔を見ることはできません。どの方角にあるかもわからないので、見つけ出すのに5~6時間ぐらいかかりました。
世界各国・地域の様々な街を見てきましたが、今の京都について思うのは、「ここは海軍基地か」ということです。冗談ではありません。京都駅の色合いが、英語で言うところのバトル・グレー(Battle gray)、すなわち戦争用の目に付かないような灰色の配色なのです。海軍の船は見えないように、保護色として全部灰色に塗ってあります。その軍艦がさかさまになったような駅だと思いました。アメリカから帰国し、最初に見た時に大きなショックを受けました。
「これは正気か、誰がこんな……」と思いました。日本のことがよほど嫌いな人が建てたのではないかと思いました。京都駅のすぐ近くの塔も不思議でした。そんな塔を建てないとシンボルがないのですか。発想が貧弱でしょう。私の知っている京都のおじさんやおばさんたちは「もう誰にも来てほしくない、日本の人にも来てほしくない」と言っています。
西鋭夫のフーヴァーレポート
国土復興と防衛(2020年3月上旬号)-8
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。