スポーツ教育論

by 西 鋭夫 April 11th, 2024

子どもの夢

フーヴァーレポートをお聞きの皆さんの中には、スポーツに熱中しているお子様がいらっしゃる人もいるでしょう。そんなお子様が、「将来はスポーツの道に進みたい」と話したら、皆さんはどう対応しますか。

答えは簡単です。親としては子どもがスポーツを頑張りたいと言ったら、全面的に応援するだけだと思います。スポーツよりも勉強しなさいとか、塾に行きなさいというのは野暮な話です。

塾に行くのだったら、スポーツの上手なやり方を教えてくれる塾に行ってほしい。スタンフォードの町の中にはそういう人たちがたくさんおります。走り方を教えるプロの指導者もおりますし、円盤投げ、砲丸投げを教えている人もいます。

 

とにかく応援せよ

スポーツだからダメではありません。むしろ「必死でやりなさい」と言ってください。親はそして、全力で子どもを応援しなくてはいけません。

若い時からスポーツで頑張りたいというのは才能がある証拠です。才能があるから、それが好きなのです。やりたいのです。ここを誤解してはいけません。その才能が開花するかどうかは、もちろん自分次第ですが、そのためのチャンスをとことん与えてあげる。悔いの残らない状況を作ってあげてください。

スポーツをやりたいと言えば、日本ではすぐに「勉強しなさい」となりますが、勉強などはいつでも出来ますよ。私がいい例でしょう。私は22歳から勉強しました。

 

教育効果

それでもなお「将来が心配です」という親心もわかります。それゆえに親は、「じゃあ、それで食っていけるのか」などと言うわけです。これは絶対に言ってはいけない言葉です。「食う」手段はいくらでもあります。ですので、食べることとスポーツは、本来イコールではないのです。

1つのことに徹底的に取り組むということはまた、子どもや若者にとってはとても重要な経験になります。教育上、極めて有意義なのです。学校に行くと色々な科目がありますが、あれは正直やりすぎでしょう。国語と算数、英語が出来たらもうそれで良いのではないでしょうか。歴史や科学なども本当に興味を持った学生たちが思いっきりやれば良い。

何か一つのことにじっくりと取り組んできた学生は強い。芯があります。それはたとえ、スポーツの夢が頓挫した時でさえ、その後の人生にとって大きな意味を持ちます。日本の就職面接にて「スポーツを一生懸命やりました」と言ったら、あまりよく思わない会社の方が多いかもしれませんが、それは企業の方が時代遅れだと思った方が良いでしょう。

アメリカの企業では「これだけスポーツをやっているやつはもう体が強い、病気をしない。そして根気がある、集中力がある」と思っているので、どんどんと雇います。そんな人材が企業の大きな力となっていくことを知っているからです。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
スポーツ大国アメリカ(2020年2月下旬号)-7

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。