From: 岡崎 匡史
研究室より
戦争には「兵站」が不可欠です。
兵站を怠ると、戦闘を維持することはできない。
戦略家であるほど、兵站を重視します。
人員、兵器、燃料、食糧の輸送と確保。連絡体制をいかに構築するか。
兵站で重要なことの一つは兵士の食事です。
戦時中、日本軍の兵士たちはどのような食事をしていたのか。
漬物の効用
陸軍と海軍の違い、そして派遣された地域によって食事内容は異なりますが、共通する食材があります。それは、漬物です。
梅干し、沢庵、紅生姜、茄子漬けなどが提供されていた。なぜ、軍隊で漬物が重宝されたのか。それは、貯蔵性、栄養面、便通の改善、歯の衛生、食欲増進などさまざまな効果があるからです。
漬物がエネルギー源になる訳ではない。たとえば、沢庵を長く漬けるとビタミンCを失ってしまうが、ぬか漬けにすればビタミンBが含まれる。脚気を予防することができた。
梅干しは防腐、伝染病予防に効果がある。漬物があるだけで、ご飯がすすむ。
日本軍の炊事班は、漬物を入れる桶や壺を食料物資として運んでいました。
兵站システム
問題はここからです。
戦争中は、生野菜の調達は困難になる。ところが、反比例するように漬物の需要は高まっていく。
最悪なことに、日本軍は兵站のシステムが整っていない。戦略を立てずに、前進をしたため物資が途絶え、兵士たちは空腹に耐えられない。
解決策はなにか。
日本軍は中国大陸で生野菜を現地調達しだした。現地人の許可無く、畑から野菜をもぎ取り、漬物桶に投げ込む。戦地で兵士の「胃袋」の問題を軽視したことが、中国人の反感を買うことになる。
食べ物の恨みは怖いことの実例だ。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・湯澤規子『胃袋の近代』(名古屋大学出版会、2018 年)
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。