十分な休養
選手の育成方法についてはどうでしょうか。日米ではどのような点が違うのでしょうか。皆さん、驚かれるかもしれませんが、アメリカでは練習は適度にしか行いません。練習のし過ぎはむしろ体に良くないことがわかっているのです。
思いっきり練習したら、体をしっかりと休ませます。練習をしないとですね、不思議と練習がしたくなってきます。何もしないでいても、頭と体でやり方を復習し始めるのです。
これは素晴らしいやり方ですよ。毎日、休みなく練習していると疲れるだけでなく、精神的にもおかしくなって、「もう練習したくない」という状態になります。好きなスポーツのはずなのに、そのことを考えたくなくなってしまうのです。そのような状態では頭と体でやり方を復習することなどできないでしょう。
筋肉の記憶
トレーニングや練習の後に体をしっかりと休ませることは科学的にも理にかなっております。筋肉は英語でマッスル(muscle)ですが、筋肉は記憶すると言われております。マッスル・メモリー(muscle memory)というものです。頭で記憶するというより、筋肉が覚えているので、反射的に動作できるのです。
練習しすぎると、そのマッスル・メモリーが発動しないと言われております。ですから、練習したら、適度に休むことが重要なのです。
コーチの質
専門的な練習と休養を、非常に優秀なコーチの指導のもと行うのですから、それは強くなりますよ。日本ではゾッとするようなスパルタ教育を受けてきましたから、アメリカに来て住んでみて、その違いに本当に驚きました。
私の娘もここの高校で陸上をやっていましたが、種目によってやはりコーチが全然違うのです。砲丸投げ、円盤投げ、100メートル、それぞれに専属のコーチがついておりました。
日本の高校ではこれらの興味を全て同じ先生が教えている状況ではないでしょうか。先生も生徒もかわいそうです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
スポーツ大国アメリカ(2020年2月下旬号)-3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。