コーチへの注目
お金で評価されるのは選手だけではありません。コーチや監督たちにも注目してください。スタンフォード大のアメフトのヘッドコーチは、ひょっとしたらスタンフォード大学長よりもお金をもらっているかもしれません。
その額は多くの場合、億レベルです。アメフトで有名ところでは監督は少なくても2億円以上が普通でしょう。ある人は10億円もらっていると聞いたことがあります。そんなにお金を出して大丈夫かと思うかもしれませんが、アメフトは全米で一番人気のあるスポーツですから、莫大な利益を生みます。ですから全く心配入りません。大勢の人がアメフトを見に来るのです。これは大学にとっては大きな広報となります。
大学が有名になって嬉しいのは卒業生たちです。彼らも多額のお金をどんどんと寄付します。寄付には税金がかかりませんから、皆さんこぞって寄付するわけです。私の息子もコロラドでアメフトをやっておりますが、学校から「寄付金をお願いします」とメールが来ました。強くなって欲しいので皆さん惜しみなく出します。親バカも出します。これがアメフトだけでなく、バスケでも、野球でもそうなのです。
部活の先生
日本の大きな問題はコーチや監督がジリ貧の中で、汗水たらしていることでしょう。思い出してください。小中高時代の部活のコーチや監督は誰でしたか。教科の先生が兼任していたのではないでしょうか。例えば、数学を教えている先生がラグビーを教えていたり、美術の先生がサッカーを教えていたりと、そんな状況です。
スポーツや運動を専門にする先生がそれぞれの部活を教えることもあったと思いますが、安月給で、土日返上でやっております。それでは長続きしないし、効果も上がらないでしょう。強いチームや個人を育てようと思ったら、コーチや監督にも特別な技術や能力、才能が必要となります。
大学でもそうです。ある特定のスポーツや競技で有名な大学に行かない限り、その道のエキスパートからの指導は得られません。そもそも日本では専門職としてのコーチや監督といった認識がほとんどないのかもしれません。良い選手であれば、良い監督やコーチになれると思っている。これは大間違いです。監督やコーチもきちんとした専門職です。日本ではそうした人たちの育成を怠ってきたのではないかと思います。
日本のプロスポーツの現状を見てください。日本人監督がどれだけ少ないことか。日本人ではいないのですか。外国出身の有名な監督さんばかりでしょう。
西鋭夫のフーヴァーレポート
スポーツ大国アメリカ(2020年2月下旬号)-2
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。