実験場としての日本

by 西 鋭夫 March 14th, 2024

喫煙データの収集

新型たばこの危険性について、さらに深く踏み込んでいきたいと思います。従来型の紙たばこと比べて、「新型」は、装置で熱して、発生した蒸気を吸います。蒸したばこのようなイメージです。

さて、米国では新型たばこの健康に対する影響が明らかになりつつありますが、問題は健康だけではありません。新型たばこは機械であり装置です。私は以前より、中国製のテレビや携帯電話には、ICチップが組み込まれおり、個人情報が集められていると指摘しましたが、新型たばこも例外ではありません。小さなたばこの中に、バッテリーや電子回路などの装置が組み込まれておりますでしょう。その中にICチップが内蔵されている可能性があります。

多くの皆さんが「まさか」と思うのでしょうが、この間、装置にある喫煙データ収集機能がばれてしまいましたね。問題になった装置は、太さは親指ぐらいで、その中にコンピューターチップが入っていたわけです。それを用いれば、ある喫煙者がいつそれを買い、吸い始めたのか。そして1日のうちに何回吸っているか、といったデータの収集が可能なのです。

 

監視社会へ

皆さん、これはかなり危険なことだと言わざるを得ません。喫煙データなどかわいいものでしょう。それは喫煙する人たちの行動パターンの解明に用いられるのですから。効果的な広告を出しやすく、勧誘戦略もじっくりと練ることができるでしょう。「そろそろニコチンが切れるんじゃないか」とチップが感知すれば、「そろそろ吸う時間帯ですよ」と、何らかの手段で伝えてくる可能性もありますね。

しかし、「喫煙データが収集できるのなら、他にどんな応用が可能かどうか」考えてみて下さい。すぐわかるでしょう。我らの生活や日常が何者かのコントロール下にあるということなのです。スマフォからも、テレビやパソコンといった電子機器からも、電子たばこからも、あなたに対するあらゆる情報が抜き取られ、管理され、監視されていくのです。

そんな監視社会が、すでに私たちの知らないところで成立しつつあるのです。監視の目は私たちの暮らしの中に何重にも張りめぐされているといって良いでしょう。

 

実験場

日本は完全に電子タバコの実験場となっております。米国は自分の国で規制され、禁止されようとしているものを、日本に対してドカドカと売りつけているわけです。「どうせ日本人は長生きするし、少々やっても大丈夫だろう」などと思っているのでしょう。日本政府も何も言わず、「よくこれを許したな」と思います。

それもそのはず、たばこ大賛成の日本政府ですから当たり前かもしれません。税金で2兆円ぐらい集まるのですから、こんなうれしい話はないのです。それを知っていてどんどん入れていくのです。

私はたばこを吸っている人を批判しているのではありません。たばことそれを取り巻く社会と、喫煙を安易に許している日本政府に対し、多くの疑問があるのです。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
タバコ利権とファシズム(2020年2月上旬号)-8



この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。