留学生政策
学生の学びを中心に据えて考えるなら、世界各国の学生が日本に集い、日本の学生たちと交流しながら学ぶことは有意義なことだと思います。しかし、アメリカで今、起きていることを踏まえると、日本の留学生政策はもう少し慎重になったほうが良いのではないか、とも考えます。
アメリカには今も昔も沢山の中国人留学生がおりますが、大問題が起きているのです。それは「盗用」という問題です。特に理系の分野ですが、AIなどの先端技術が盗まれているのです。トランプさんもこれを深刻に憂慮し、中国の留学生らを盗っ人呼ばわりしております。
この経験を日本がどう学ぶか。これはとても重要です。例えばIPS細胞は日本の財産でしょう。その技術が盗まれたらどうしますか。開発までに得られた膨大な実験データも漏洩してしまった場合、大変なことになります。中国は盗用技術に長けた国です。日本の新幹線技術も、リニア技術も、すでに中国のものとなりつつあります。
国益の砦
アメリカではトランプさんが先頭に立ち、「中国の留学生を大学院に入れるな」と言っております。日本では信じ難い暴言に見えますが、それでも彼は「あいつらは盗っ人だから、入れてはいけないのだ」と言い続けています。アメリカ人は拍手喝采です。
アメリカ全土の町や学校にあった孔子学院も全て追い出しました。オバマさんの8年間で、中国人たちがドッとアメリカに入ってきましたが、事情を知る人たちは内心「オバマさんはアメリカをつぶすのか」とヒヤヒヤしていたのではないかと思います。トランプ体制となり、様々な現状が明るみになって、追い出し政策へと変わっていきました。
もちろん、全てが盗人留学生ということではないと思います。真面目な留学生もいるでしょう。しかし、少なくとも今いる優秀な中国人留学生や研究者たちはずっと監視されていますよ。間違いありません。学校が監視しなくとも、FBIが監視しています。
大学改革
大学経営という観点から見ると、特に日本の大学院の現状は悲惨です。一部の有名校を除けば、定員割れしているところがほとんどなので、韓国や中国、さらにはアジア各国からの留学生がいないと成り立ちません。そんな中で、中国人留学生を締め出したら大変なことになるのは目に見えています。
しかし、日本の場合はそれ以上に深刻な問題を抱えています。それは教育の質、研究の質に関わるところです。お客さんが来ないのなら、無理に受け入れるのではなく、自分たちの研究や日本人学生の教育に、時間とお金と労力をどっとかけなさい。日本の大学は地殻変動が必要です。
日本の大学はぐうたらやっております。学生様のお顔を伺いながら、失礼のないよう優しく接しているのです。お遊び状態ですよ。日本の大学では入学者のほぼすべてが卒業しますが、アメリカではどこでもほぼ半分が落第です。学生たちにしっかりと勉強させなさい。
西鋭夫のフーヴァーレポート
国際政治とリーダーシップ(2020年1月下旬号)-9
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。