司令官の殺害
イランはアメリカを敵対視していますが、本気で戦争を仕掛けるつもりはないと思います。他方のアメリカも本気で戦う気はないでしょう。しかし、「何かやらかしたら、しっかりと仕返しするぞ」ということを圧倒的な力の差でもって示す必要があります。抑止の信憑性を高めるわけです。
この文脈の中で、先日のイラン司令官殺害という出来事を捉え直すべきでしょう。イランを恐れて行ったとか、先制攻撃として行ったというより、圧倒的な力の差を見せつけることが最大の目的だったと思います。イラン国内で力のある、そして人望の厚い司令官が、ドローン兵器によって一瞬で殺されてしまった。防ぎようもなかったわけです。あの攻撃はイランの指導層にとって大きな衝撃を与えたものと思います。
アメリカ・ファースト外交
「アメリカのことを第一に考えていきましょう」という政策からすると、世界各国・地域に出て軍事作戦を展開することは、一見すると矛盾しているように見えます。しかし、これは合理的なことと言えます。
アメリカを第一に考えれば考えるほど、どんな国にも負けないアメリカである必要があります。ですから、アメリカ国内だけでなく、外に対してもバンバンと積極的に出て、アメリカの力を見せつけるのです。
トランプさんから見ると「俺たちが一番だよ、皆さん分かっているね」ということです。「海外に悪いやつがいる。アメリカはこいつをこらしめて、どこに隠れても俺たちは見つけだしてドローンで撃ち殺すぞ」ということで、それを実際にやったわけです。アメリカ人は熱狂しておりましたよ。トランプさんへの評価はさらに高まりました。
イランは変わるのか
こうした状況下で、イラン社会は変わっていくのでしょうか。今後じっくりと見定めていく必要があると思いますが、イランがこの先、どの道をたどるかでイランの運命が決まっていくと思います。
厳格なルールや教義を大切にしてきた国でさえ徐々に変わり始めています。トルコも世俗化しました。ガチガチだったサウジアラビアも、どんどんと自由を受け入れています。そうしないと国が分裂しかねないのです。
この中で威力を発揮しているのが、皆さんの手の中にあるスマートフォンであり、ソーシャルネットワーキングです。私のものはガラパゴス携帯ですが、皆さんお持ちのスマートフォーンが世界を変えております。
西鋭夫のフーヴァーレポート
国際政治とリーダーシップ(2020年1月下旬号)-4
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。