箸使い
アメリカのファスト・フードの話をしてきましたが、それは日本の食文化と大きく違います。優劣の話ではもちろんございませんが、食の話になると私の父のことをいつも思い出します。父は食事のマナーに大変こだわる人でして、私なぞ毎日のように怒られておりました。
代表例は箸の持ち方です。私は父によく「箸の持ち方が美しくない」と言われました。意味が分かりませんでした。続けて「育ちが出るぞ」と言われましたが、「育ち」と言われてもピンときませんでした。
ただ、そういうことをずっと聞いて育ってきたこともあり、箸使いについては気をつけてきました。そうすると、ある時、日本の有名な料理評論家の方にお会いしまして、「西先生、箸の使い方がエレガントでございます」と褒めて頂きました。私はただガツガツと食べていただけなのですが、箸の使い方が身についていたのでしょう。銀座の有名なお店に連れて行って頂きました。
素材
私たちの口に入れるものも変わってきております。オーガニックというやつです。アメリカのお金持ちたちは、今ではほとんどオーガニックなものしか食べません。すなわち、農薬を使った野菜などは食べないのです。
価格は普通の野菜と比べ20%ほど高くなりますが、それでも皆さん、ちょっとでも良い素材を求めております。安いものを買ってしまうと、「あなたは農薬を食べて死ぬのですか?」など言われます。
無農薬で作るのは野菜だけではありません。お肉もそうです。牧場で育った牛と牛舎で育った牛、アメリカでは完全に肉屋ごとに分かれております。「こちらは無農薬、それからビタミン剤、栄養剤を使っておりません。穀物と草だけで育てました」という感じです。
格差
裕福な人はより良い食べ物にアクセスできて、お金がない人は加工食品やファスト・フードばかりを食べている。そんな構図ができております。
食の違いは、体のサイズに表れております。アメリカに行かれた方は街中で気づくと思いますが、アメリカでは今、肥満がどんどんと増えております。肥満の人はそのほとんどが貧困層です。すなわち、タンパク質を食べないで炭水化物でお腹をいっぱいにするのです。炭水化物は体の中で糖分に変わりますので、どんどんと肥満になるのです。
アメリカで今、一番大きな医療費は肥満対策になっております。日本ではまだそうした状態になっておりませんが、日本もいずれ貧富の差が拡大し、肥満が増えていくでしょう。
西鋭夫のフーヴァーレポート
胃袋戦争(2020年1月上旬号)-8
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。