日中関係
米国と中国が激しく対立しております。比較的良好であった貿易分野での確執も目立ってきました。知的所有権などについては、米国はかなり苛立っている状況であると思います。
そんな中、米国の同盟国である日本はどう動くべきなのか。軍事力のない日本は、中国とアメリカという2つの大国に挟まれながら右往左往しているように見えます。日中関係は今後、どのように展開していくのか。
私は中国の歴史を勉強しましたが、「あの国は偉大なり」と思っています。偉大な中華文明を作りました。日本もその恩恵をたくさん受けました。ところが清国が崩壊すると、中国は混とんとした国になり、そこに外国がたくさん入って行きました。大戦で日本が負けた後は、毛沢東が蔣介石を台湾に追いやり、共産党の国を作りました。共産党というのは一党独裁で、その他のイデオロギーや政治哲学を受け入れません。
宗教
中国共産党はまた宗教の影響を排除しようとしました。ロシア帝国が潰れた後に、ソ連邦は宗教禁止となりましたが、地下ではロシア正教会が動いておりました。あれほど宗教色の強かったロシア帝国が、崩壊と共にガラリと宗教への態度を変えていったのです。同じようなことが今の中国では起きています。
中国には昔からカトリック教が大勢おりました。そのほとんどが今は隠れキリシタンとなっています。中国大陸の西側にはまたイスラム教徒が大勢おります。彼らは中国人の顔をしていませんけれど、中国人です。その人たちは今再教育の収容所に入れられて、「宗教をやめなさい」と教育されている訳です。
中国政治が何か大きな転換を迎えるとすれば、経済的、政治的混乱に乗じて、抑圧されてきた宗教が顔を出すときではないかと思います。中国共産党の一枚岩にひびが入った時、それぞれの神を信じる人たちが、そこからわーっと出てくるのではないでしょうか。
中国の成長
中国経済が飛ぶ鳥をおとす勢いで成長していますが、それを助けたのはアメリカと日本です。文句を言っておりますが、経済力のある中国を望んだのは私たちです。自業自得と言えるでしょう。
文句だけでなく、中国経済を壊そうとしているのがトランプさんです。ハンマーでもって叩いているような状況です。これにより、中国共産党の高い成長率は減速するかもしれません。
そこで中国は今度は、日本の大手産業や大手企業に対して「こちらにおいで」と声をかけています。優遇措置をちらつかせながら、日本企業を誘致しようとしているのです。調子に乗って入っていった日本はどうなるか。新幹線が良い例でしょう。気がつけば技術も市場も中国に乗っ取られてしまいました。日本企業も、日本にいるだけでは業績を伸ばせませんから必死です。それも分かります。しかし、もし中国に進出されるのであれば、遺書を書いておくことをお忘れなく。我々が知っている原理で中国は動いていないのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
第三次世界大戦の予兆(2019年6月上旬号)-8
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。