朝鮮有事

by 西 鋭夫 October 9th, 2023

日本の急所

朝鮮半島で何かが起きた時、日本はどうなるのでしょう。米国や周辺国の動きも含め、徹底的なシュミレーションはできているのでしょうか。そんな質問を受けたことがありますが、これはもう非常に難しい質問でして、きちんとお話ししようとすると、あと2、3時間は必要です。

簡潔に言いますと、朝鮮半島は日本の背骨に向けられた合口(あいくち)、すなわち短刀のようなものです。日本列島を下に置き換えて世界地図を見ると、短刀が日本の背骨に向けられているように見えます。これでグサッと刺されたら私たちは崩壊です。脊髄をやられますので、足腰が動かなくなります。

日本がそうなってしまったら、米国にとっても一大事です。北朝鮮の暴発を止める手立てが限られてくるからです。韓国に駐留する在韓米軍は孤立するでしょう。どんなに最新鋭の装備や武器があっても、北朝鮮の裏には中国やロシアが控えておりますので、持ち堪えるのは厳しい状態となるでしょう。

 

作戦計画

以上のような状況に少しでも陥る可能性があると判断された段階で、米国は北朝鮮に対してすぐに行動を起こします。極秘にてすでに幾つもの作戦計画を練っているのです。

世間では金正恩とトランプによる「歴史的会談」などと言って騒いでおりますが、少し冷静になった方が良い。これで両者は2度お話をしましたし、今後も続くかもしれません。そして、この話し合いが続いている間、北朝鮮は日本に対して何もしていません。しかし、米国ではすでに北朝鮮に対する軍事行動の準備が出来ているのです。いつでも攻撃できる体制にありながら、協議をしているのです。

話がこじれて袋小路に陥った時、北朝鮮が仮に米国に対して「このやろう、アメリカめ。俺をなめやがって、日本を撃ってやろうか」などと本気で言ったら、アメリカはもう北朝鮮に攻撃を仕掛けていますよ。北朝鮮もそれを知っていますから、金正恩は内心、戦々恐々としているところだと思います。



韓国

では、朝鮮有事の際、韓国はどう動くのでしょうか。もちろんそれは政権次第でしょうが、今の韓国について言うと、自分たちが北朝鮮に対して、さらには日本に対して、アメリカに対してどうして良いのか全くわかっていない状況にあると思います。皆さん、これは韓国の悪口を言っているのではありません。現政権の対外政策を、冷静にかつ客観的に分析すると、説明できない部分が多いのです。

もし北朝鮮とアメリカがドンパチの寸前になった時、韓国はどちらに味方すると思いますか。驚くかもしれませんが、現在の韓国であれば米国ではなく、北朝鮮の立場を擁護しますよ。あるいはそこまでいかなくとも、立場を曖昧にするでしょう。戦争が始まったら壊滅的被害を被るのは韓国だからです。国土全体が焦土化するでしょう。韓国はそれをなんとかして避けたい、と考えています。

米国はと言いますと、そんな韓国の立場を知らないわけがない。その上、中国とロシアの動きを把握しておりますから、軍事行動の準備はしつつも、威圧的な行動は控えているのです。北朝鮮に接近しながら、実はその先に、北朝鮮と中国、そしてロシアとの関係を牽制しているのです。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
第三次世界大戦の予兆(2019年6月上旬号)-4


 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。