歴史
未来志向という言葉がもてはやされているように思います。聞こえも良いですし、明るいイメージがあります。しかし未来をしっかりと見ようとすればするほど、私たちが過去に何をしてきたのかについてじっくりと学ぶ必要があります。
過去とはまさに歴史であり、自分たちが歩んできた道のことです。実現したことだけでなく、失敗したことも全部含めての歴史です。よく「歴史は繰り返す」という言葉を聞きますが、これは「歴史が繰り返す」のではなく、「人間が同じことを繰り返す」という意味です。すなわち、人間が主語なのです。私たちの感情や欲望、煩悩ゆえに繰り返されるものが歴史なのです。
そうすると、どんな時に何が起きるのかについてはおおよその見当がつきます。シナリオはいつもほとんど同じだからです。100年、200年と、役者と名前、国が変わるだけで、似通ったストーリーが繰り返し起きています。
周辺国の動向
日本の未来について考えるといっても、もちろん日本だけで決めることは出来ません。周辺国の動き、世界の動きについても同時に見極めていかないといけません。
例えばお隣のあの大きな中国ですが、このまま経済が順調かといえばそんなことはないでしょう。低迷期に入った時、中国はどう動くのでしょうか。では、その上にあるロシアはどう動くのでしょう。今は平和な時代が続いておりますが、一年後、二年後の状況がどうなっているかは分かりません。おそらくこれほどまでに長い平和はもうないのかもしれない。そんなふうに考える時もあります。
中国やロシアの動向を見ながら、私たちはまた米国との関係について考える必要があります。私たちは戦後75年、米国に依存した状態での安全保障を実現してきましたが、賞味期限はギリギリでしょう。いまだに米国の高額な戦闘機を買わされていますよ。一機、何百億円するかわかりませんが、日本にはもうお金の余裕がありません。
教育
今、第三次世界大戦が始まったら、日本はどうするのでしょう。アメリカは世界の多くの局面で数々の戦いを強いられることとなるでしょう。その時、日本はどうするのか。そしてアメリカは日本防衛のために本当に駆けつけてくれるのか。むしろ日本は捨て石になってしまうのではないか、そんな意見も聞こえてきます。
以上のような事柄についてじっくり考えていくためにも、歴史から学ぶことが大切なのです。第一次、第二次大戦がなぜ、どうして起きたのか。日本ではその検証という点で、世界でも恥ずかしいレベルの教育、研究状況です。例えば、中高の「歴史」の時間を思い出して下さい。近現代史は「時間切れ」で教えられていないでしょう。いざ、検証しようとしても、公的文書の保管も不十分だし、個々人の名誉云々と言われ、重大な文章にもアクセスが出来ない状況が続いております。
西鋭夫のフーヴァーレポート
第三次世界大戦の予兆(2019年6月上旬号)-3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。