日本人の対中イメージ
私たちは「中国」というと、20〜30年前のあの貧しくて、汚い中国をイメージします。しかし、私たちが想像するような中国はもうほとんどありません。もちろん地方に行けばあるかもしれませんが、都市部を歩けば、印象がガラッと変わるでしょう。
日本人もそうですが、太平洋の向こうのアメリカ人たちも、中国が劇的に変わっていることに気づいていないのです。まだまだ発展途上の国だと思っている。しかしそれは違います。今の中国は、特にトップ10%ぐらいの人たちはものすごい勢いでビジネスを展開し、大金持ちになって世界中で暮らしております。
裕福層だけではありません。中間層、いわゆるミドルクラスにも勢いがあります。彼らはじゃんじゃんと日本にやってきて爆買いしています。観光地はすでに日本人観光客だけでは持ちませんから、中国人が大好きです。
中国の底力
中国は偉大な帝国を何千年も維持してきた国です。共産党になってみじめな生活になってしまい、はっと気がついたのでしょう。「国民に金もうけをさせなければいけない」と。そして、世界経済への門戸を開き、どんどんと改革を断行していきました。中国の経済手腕は、私たちも真似しなければいけないほどです。どぎつい感じがしますが、日本はそのくらいやらないと食い物にされ続けます。
日本はかつて白物家電、すなわち冷蔵庫や洗濯機などの分野ではその性能も含め、世界一の技術を持っておりました。しかしその座は今、台湾や中国に移りました。そのうち日本のお家芸である自動車産業も中国産にとって代わられる日が来るでしょう。
共産主義との相性
中国はIT企業の促進、AIの開発に力を入れておりますが、そもそも政治体制とAIとの相性についてはどう考えたら良いのでしょう。中国は共産党ですが、勝手気ままに人智の及ばない決定を下すAIは、共産党の支配にとって弊害ではないかと考えてしまいます。
しかし、見方を変えれば、AIほど国民をコントロールするために活用できる優れた技術はありません。中国にとっては鬼に金棒です。
もっとも活用されているシステムがAIによる「顔認証システム」です。中国ではここ最近、暴動が頻繁に起きておりますが、そこにどんな人たちが参加しているのかについては膨大なデータがあります。そのデータを用い、全国に配備された約60万の特別警察部隊が暗躍しております。反政府主義者たちの行動をこのシステムを用いて監視しているのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
AI戦争と監視社会(2019年4月下旬号)-7
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。