サイバーセキュリティー
フーヴァーダイジェストの第2号にAIに関する論文が掲載されています。ハーバート・リン教授による「サイバーセキュリティの最新技術戦略」です。
リン教授によれば、AIは敵対的なサイバー攻撃を認識する手段として極めて有効です。現状はというと、サイバー攻撃を受けてからある程度時間が経っていないと攻撃の痕跡を発見できないのです。これでは遅い。甚大な被害が出て、初めて攻撃に気づくようなものです。しかし、AIを用いることで、より早い段階から相手の攻撃を察知できるようになります。これは被害の最小化にとって重要です。
しかし、気をつけなければならないのは、リン教授がこの論文を書いた時から、すでに数ヶ月が経っているということです。すなわち、リン教授が知っているAIより、数十倍強力なAIが誕生しているのです。攻撃の前のわずかなシグナルを感知して、それに対抗手段を打てるほどにAIは進化しているかもしれません。サイバーセキュリティーは秒速で進化する世界だと考えて良いでしょう。
生き残る術はあるのか
手塚治虫さんという天才漫画家がおられましたが、彼が見た未来はもうすぐそこに来ています。あの漫画の中で描かれた架空の時代は、今、現在なのです。AI革命が産業革命の時のように、日本でも世界中でも起こります。その時、私たちのような「生」の人間はどうすれば生き残ることが出来るのでしょうか。
スイッチを切れば良いとか、そんなレベルではありません。今、AIのスイッチを切ったら私たちは逆に生活できないでしょう。ゆえに私たちはAIと競うのではなく、AIと共にどうすれば幸せな生活を送ることが出来るかを考えるべきです。
AIにも得意不得意分野がありますから、それをしっかりと見極めることも重要でしょう。例えば掃除機を例にとってみると、紙が落ちていて、「この紙はゴミなのか」あるいは「大事な書類なのか」というのは、AIにはまだ判断出来ません。これはごく一般的な例ですが、何もかもAIに任せるのではなく、AIが得意とすること、苦手とすることを見極めてうまく利用することが必要です。
AIの進化と人間の退化
役立つAIがどんどんと開発され、人間がそれをどんどんと使う。そうなると、人間は能力は将来的に劣っていくことが予想されるでしょう。皆さん、覚えておいてください。AIの進化は、人間の退化をもたらす可能性があるのです。
皆さんが持っている携帯を例に考えましょう。10万円ほどするこの機械で、何でも出来る時代です。電話番号も全て覚えております。私が学生の頃は付き合っていたお嬢さまの電話番号は全部暗記しておりました。皆さんは今、暗記のあの字もされませんよ。自分の家の電話番号も分からないでしょう。
同じようなことが、私たちの生活の隅々まで起きていきます。すなわち、いろんなことをしなくても、料理ができなくてもAIがやってくれる世界がやってくるのです。手術も運転も全てAIです。AIは疲れませんし、文句も言いません。完全にコントロールされ、プログラムされた通りのことを永遠と行います。人間の出る幕ではなくなるでしょう。
西鋭夫のフーヴァーレポート
AI戦争と監視社会(2019年4月下旬号)-4
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。