AI脅威論
「AIが人間の職を奪うのではないか」という見方が根強く残っておりますが、AIが問題なのではありません。AIをどう使うかが決定的に重要です。
イギリスの産業革命を思い出して下さい。あの革命は水蒸気が機械を動かしたことで起きたものです。代表例は蒸気機関車でした。日本にはSLファンが大勢いらっしゃいますが、そのSはスティーム(steam)、すなわち水蒸気であり、Lはロコモーティブ(locomotive)、すなわち機関車です。
さて、この「水蒸気」は私たちに何をもたらしたのでしょうか。職を奪いましたか。水蒸気のおかげで、私たちの生活はとても便利に、そして豊かになりました。食べ物も増え、家も頑丈になり、生活が楽になりました。
科学の進歩
人間は科学の進歩を常に受け入れてきました。電話が出てきて、いわゆる飛脚が走らなくて良い、早馬が走らなくても良い、そんな時代になったのです。飛脚や早馬でなくとも、電話で解決できてしまうのです。
今は携帯ですが、携帯電話が導入されたことで生活が不便になったのですか。逆です。ますます便利になりました。携帯がなかったらもう生活はできません。子どもの携帯を取り上げるとそこで大喧嘩になるわけです。それほど私たちの生活の中にスマートフォンが入り込んでいます。その価値は、自動車や洗濯機などと同じレベルかそれ以上と言えるかもしれません。
便利なだけではありません。仕事の効率が高まったことで、時間が大きく節約されました。そしてその余った時間を私たちはまた別な活動へと投入しているのです。AIが乗っ取ることができる仕事については、私たちはもうしなくとも良いのです。その分のエネルギーと時間を違ったところに割けば良いのです。
活用法
AIの開発で私が特に望む分野は医学です。その代表例は手術です。今後は人間ではなく、AIがどんどんとこの分野に入ってくるでしょう。白内障の手術をしているとき、あるいは何か大切な臓器を扱っているとき、ロボットはくしゃみなどしませんね。汗も書きませんし、緊張で血圧が高まることもありません。私の知人が医者をしておりますが、心臓移植などにおいては「ロボットの方が安心で、びくともしない。汗を拭かなくても良いし、眠たくならない。ぜひ採用したいね」と言っていました。
AIはまた疲れを知りませんし、文句も言いません。いつでも正確に、仕事を遂行することができます。そんなAIをどう使うか。私たちはそこに頭を使うべきでしょう。
私なんぞAIには、新しい薬の開発においても、インフラ設備の開発から設置においても、さまざまな活躍法があると思っています。教育の現場においても、人を「感化」することは難しいかもしれませんが、勉強のお手伝いをする、家庭教師をするといったことは十分に可能でしょう。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年3月下旬号「揺らぐ日本の人材育成」-8
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。