日本人の勤勉さ
「働き方」について勘違いしている人が多いように思います。そもそもの前提として、日本人の勤勉さが失われてしまったと思っている人がおりますが、これはお門違いです。失われておりません。日本人は今も昔も勤勉です。必死に勉強すること、必死にお金を稼ぐこと、必死に運動すること、などなど。これらは日本人が最も得意とするところでしょう。
大いなる誤解は、全ての日本人がそんなふうに出来ると思い込んでいることです。すなわち画一的に捉えているところが問題なのです。実際、そうはなりません。
例えば、英語が嫌いな子に英語を教えたって無理です。それなのに日本では、英語を必修にしていますよね。そんなバカな必修政策はやめたらどうでしょう。勉強したい子だけを集めてやったらよろしい。日本人の英語力はワッと伸びますよ。同じように、足の遅い子に早く走れと教えたって無理なのです。
適材適所
ある程度のところまで来ると、自分が最も適するところ、そして自分の立ち位置、すなわち適役というのが分かってくるのですから、そこに集中するのが良いと思います。そしてそんな環境で十分に実力が発揮できるよう後方支援する。それが教育の、そして働き方に関わる我々の基本的立場であるべきだと思います。
それぞれに持ち場があるのです。一生懸命という言葉がもてはやされておりますが、本来この言葉は一所懸命でした。一つに生きるではなく、一所、すなわち一つの場所を懸命に守る、という意味です。私たち一人ひとりには必ずどこかに才能があります。それを見つけて、そこに全力投球するのです。別に大学に行かなくたって頭の良い人はいっぱいおります。適材適所にて、キラキラと輝きながら働き、生きている方々は大勢いらっしゃいます。
それを政府は一網打尽に、画一的にこの働き方はダメ、これは良い、などと決めていくのです。息苦しくてしょうがない。
人手不足
人材育成もさることならが、日本で大きな問題になっているのが「人手不足」です。多くの企業が「人手不足」を克服するために、苦労しておりますが、これも本を正せば、その原因は政府による画一的な労働環境や働き方をめぐるルールづくりにあります。
身の回りを見てください。ちゃんと働きたくてうずうずしている女性がわんさかおりますよ。そんな女性にまともな仕事を与えてこなかったのは誰でしょう。60歳、65歳などで退職というのも酷な話です。平均寿命が80歳を優に超える社会で、60歳で退職させるとは何事か。働きたいおじさん、おばさんたちはまだまだいらっしゃいます。
女性や高齢者の雇用に対する政策が十分でない中で、「人手不足」という言葉が一人歩きしているように思うのです。見方を変えれば、日本社会にはまだまだたくさんの希望があるのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年3月下旬号「揺らぐ日本の人材育成」-7
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。