From: 岡崎 匡史
研究室より
前回は「神道指令違反」に関する史料を紹介しました。
1945(昭和20)年12月15日、GHQは「神道指令」を日本政府に発した。
正式名は「国家神道、神社神道ニ対スル政府ノ保証、支援、保全、監督並ニ弘布ノ廃止ニ関スル件」と、マッカーサーからの命令文書である。
「神道指令」は、GHQ内部で特に重要な指令と受けとめらていた。
この指令を「爆弾」と呼ぶものまでいたのである。
GHQダイク大佐
GHQ民間情報教育局(CIE)局長のケネス・ダイク大佐は、記者団に「神道指令」の意義を次のように語る。
「古来日本の神道は決して軍国主義的なものではなかったが、明治以来これが侵略主義を合理化するために歪曲されたものであり誤った他民族に対する優越感を与えていた『神の子』として侵略その他の蛮行がすべて合理化されたのは明治以来の官製神道の教義」「神道を国家主義の目的に使ったのは『巧緻きわまる創作』だった」
米国の報道
米国の雑誌『ニューズ・ウィーク』は、「国家神道の廃止は人間宣言と同様に、日本人を迷信から解放させた」「ジャップの脳は、都合のいい作り話をあたかも真実として信じていた」と、優越観に浸っている。
『ニューヨーク・タイムズ』は、国家神道の廃止を「マッカーサー元帥は天皇制を支えている支柱を根こそぎ斧で切った」とたとえ、神道の行く末を「国家からの資金的援助を受けられない神道は立ち消えになり、その地位を仏教やキリスト教などに明け渡すことになる」と、予測した。
「神道指令」の発表を取材していた『シカゴ・サン』紙の特派員マーク・ゲインは、「もし日本人が現在計画されつつある激烈な変革に対して反逆しようというのなら、今こそその機会」であり、多くの外国人ジャーナリストも「宗教を根底からくつがえされてもなおかつ反逆しないのなら、日本人はもう絶対に反逆しないだろう」と捉えていた。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・新宗連調査室編『戦後宗教回想録』(PL出版社、1963年)
・マーク・ゲイン『ニッポン日記』(筑摩書房、1982年)
・ウィリアム・ウッダード『天皇と神道』(サイマル出版会、1988年)
・ “Religious Emancipation Is the Jap’s, by MacArthur’s Grace,” Newsweek, 14 January 1946.
・ “Japan Undisturbed by Shinto Ban,” The New York Times, 23 December 1945.
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。