学校を辞める子どもたち
日本では今、たくさんの児童や生徒が学校を辞めています。なぜでしょうか。辞める側に何か問題があるのではないかと考えられがちですが、逆です。問題のほとんどは学校側にあります。より大きな観点で言えば、現在の教育制度を作った体制側に問題の根本があるのです。
日本の若者たちをしっかりと教育し、それぞれの能力を伸ばしながら、人として、そしてリーダーとして育てていく。その過程を作り損ねたのは誰でしょう。国や文部科学省であり、また地方自治体であり、それぞれの学校であると思います。
教育制度
日本の教育システムがだんだんと整備されてきたのは明治時代です。学校の形が出来るにしたがっていろいろな法律や規則が出てきました。それはいわば、教育という形、すなわち私たちが成長するために必要な哲学に、有形無形の様々な壁や屋根を作っていく作業と同じでした。
特別な才能を持った子にとって、壁や屋根に囲まれた学校は窮屈です。自由な発想をのびのびと広げていくことも出来ない。せっかく持っていた素晴らしい才能は伸ばされることもなく、役立てることもできず、最終的には無くなってしまうでしょう。
明治初期の日本を牛耳ってきたのは薩長・土佐ですが、そこで活躍したお兄ちゃんたちはほとんど勉強しておりません。ところがこの人たちには、規格外の勢いと勇気があったのです。自分の考えを押し付けるという傲慢さも備えておりました。そんな人が今の日本にいたら、すぐにでも警察に捕まってしまうでしょう。
画一的教育の問題
何が言いたいのかというと、リーダーというのは少し人から外れているのです。極端に外れているのではなく、少しだけ外れているのです。その「外れ」具合を認めずに、規則やルールの中で押さえ込むことは窮屈です。現代の教育現場では、ちょっとの違いも許されないのです。
教育は国家の屋台骨であり、国の発展の礎です。画一的な教育、規則やルールだらけの学校で、若者たちが伸びやかに学ぶことは到底できないでしょう。ましてや将来の日本を引っ張るリーダーを作るには、教育現場に抜本的な改革が必要です。
教育におけるお金の使い方にも問題があります。日本の子供一人あたりの教育費は、経済協力開発機構(OECD)のデータによると加盟国36カ国中7位。しかし、高等教育に対する教育費の対GDP比は、ロシア、ハンガリー、チェコに続いて日本はワースト4位となっています。一体、何にどれだけ、どのように使っているのでしょうか。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年3月下旬号「揺らぐ日本の人材育成」-1
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。