なぜ原発なのか
日本では長らく「原発は二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーである」と宣伝されてきました。しかし、スタンフォードの先生たちが指摘しているように、二酸化炭素にはそもそも害はありません。ですから、二酸化炭素を排出しないので原発が良い、というロジックは通用しないのです。
二酸化炭素が悪者でないなら、パリ協定に留まる理由もなくなります。そうなれば、日本は原発を推進する大義名分を失うことになるでしょう。これは政府にとっても、原発推進勢力にとってはかなりまずい状況です。だからこそ政府はパリ協定に固執し、二酸化炭素を悪者扱いしていかないといけないのです。
原発災害
しかし、原発に頼る時代はもう終わったのです。原発が壊れたら汚染どころの話ではありません。人間も住めなくなるのです。放射能に汚染された地域は、1万年が経過しても立入禁止でしょう。人智を超えた災害なのです。
除染についてもお話ししましたが、汚染された土や水はどこにでも動いていくのですから、除染に終わりはありません。
原発事故後に放出された放射線と様々な病との因果関係もあるでしょう。政府はおそらく認めないでしょうが、住民たちの健康被害にしっかりと向き合っているお医者さんたちもたくさんいらっしゃいます。
廃炉技術
日本が今、そしてこれからの十年、二十年で取り組むべきは再稼働ではなく、廃炉技術への投資です。原発は大地震を待つだけの悲しい運命にあります。ご存知のように、日本は太平洋をぐるっと回っているリング・オブ・ファイアのど真ん中に位置しております。千島列島から沖縄まで、大地震が起こる道の真ん中に座っている感じです。ですから、日本の環境問題で一番怖いのは原発なのです。
自動車の排ガスなどは日本の技術でもうすでに問題がなくなったとさえ言えるでしょう。日本の電化製品も品質が良く、電気をほとんど使いません。音もしません。アメリカの洗濯機や食洗機は、まるで家の中をジェット機が飛んでいる感じです。会話ができません。それほど雑なのです。
日本の技術は圧倒的に丁寧で、お上手です。この日本で技術的に解決できないものはなかなかありません。廃炉作業はかなり厳しい状況に置かれていることは確かでしょう。しかしこれを解決できたなら、世界中から称賛されるのではないかと思います。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年3月上旬号「原発密約とパリ協定」-7
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。