終わりなき除染

by 西 鋭夫 April 6th, 2023

除染完了宣言

私は福島の件について相当腹が立っておりますので、きつい言葉になりますが、しっかり伝えたいと思います。政府は「除染はすでに完了した」と言っておりますが、それは誰がどう判断するのでしょうか。「皆さん、もう帰ってきていいですよ」と、これまで出していた避難指示も解除されましたが、果たして誰が戻ってくるのでしょうか。若いお兄ちゃん、お姉ちゃん、子どもたちはなかなか戻ってこないでしょう。

では誰が戻ってくるのか。私みたいな高齢者です。私たちからすれば「除染が終わりました」「戻ってきてください」「お金も補助しますよ」というのは、どうせ死ぬのだからと、危険な地域に放り込まれているような気がするのです。バカにされているのではないかとさえ感じます。これが率直な気持ちです。

何度も言いますが、除染には終わりはありません。何百年、年千年が経っても終わりません。校庭や運動場の除染が完了したというニュースを見ましたが、校舎の下や屋根裏、窓の隙間などに入った汚染土は取り除かれていないのです。根本的な話ですが、土は風雨によって移動しますよね。森や山の中に、あるいは湖沼や河川にも入り混じり、いろいろな場所へ運ばれます。汚染土も同じですよね。さまざまな場所へと移動し、堆積し、そこにある土や水を汚染するのです。

責任の所在

この事故の責任はどこにあるのか。放射能による汚染で故郷を失った人々の責任は誰が負うのか。残念なことに今だに明確になっておりません。それは国なのか、あるいは東電なのか。

東電からすれば、国が原発を推進し、稼働に対して許可を出しているのだから、責任を負うとすれば「国」となるでしょう。一方の国は、最終的な原発稼働の決定は企業側にあるのだから「東電」ということになるでしょう。両者ともに、今更何を言っているのだろうと憤りを感じますが、現状は信じ難いことにさらに酷い状態です。すなわち、この両者が協力しながら、共に責任逃れをしているように見えるのです。

この談合的な体質のために、責任の擦り合いを通り越して、お互いを守り合うという状況が生まれているのだと思います。その結果、事故の責任は国でもなく、東電でもなく、「国民」全員にあるということになりました。

私たちの税金から復興への予算を集めることになりました。復興税の誕生です。いろいろな議論があったよう思われますが、ふと気づけば「私たち自身が福島のために税金を払う」という構造に組み込まれていたわけです。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年3月上旬号「原発密約とパリ協定」-2

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。