キリスト教
民主党と共和党でLGBTに対する考え方が異なるように、歴代の大統領によっても結婚に対する考え方は違います。根底にあるのは思想的な背景です。中でも、聖書に関わるもの、すなわちキリスト教による影響は米国社会に大きな影響を与えています。
キリスト教にもさまざまな宗派はありますが、とにかく同性が結婚するというのは教会としては認めることは出来ません。教会が認めるということは、聖書を否定することになるからです。これはこの数年の話ではございません。数百年から千年単位でそうなのです。
その長い歴史から見れば、現在の状況は一瞬のくしゃみのようなものでしょう。教会がそれを受け入れるとは到底思えません。ですから、この問題をグイグイと前に推し進めようとすると、教会側との闘争にまで発展してしまうのではないかと思います。そんなことは誰も望まない。
知られざる真相
ほとんど明るみには出ておりませんが、教会内部にも極めて重大な問題があります。カトリック教の総本山であるヴァチカン市国についての暴露本が出ました。カトリックの神父様は全員が男性ですが、その約6割がゲイだというのです。「ゲイでないと出世できない」とまで書かれています。
衝撃が世界各国を巡っています。アメリカも例外ではありません。神父が若い男の子を性の対象として扱ったために、聖職者としての職を失う人も出てきました。ほんの少し前までは、教会側はこのようなことをずっと隠してきたわけです。もう何十年というレベルでしょう。
しかしバチカンの場合はカトリックの権威なわけですから、聖職者が職を失うだけではすみません。法王は今、なんとかしなければならないと頭を抱えているところだと思います。
人権
では、一方のLGBT賛同者らは何を根拠に運動を展開しているのでしょうか。キーワードは「人権」です。賛成派の人たちは、LGBTといえど、そもそも彼らは生まれた時から一人の人間であることを主張します。すなわち、個人の権利をまずは認めるべきだと考えるのです。
したがって「同性愛だから結婚を認めない」「同性愛だから社会的に差別される」といったことはそもそも個人の権利に反するのだと考えるわけです。この発想は、1950年代、60年代の公民権運動を彷彿とさせます。黒人だからといって差別されることはあってはならない。まずは「一人の人間として尊重すべきである」といった議論です。
しかし現在の問題は次の点で大きく異なります。それは、同性愛に関わる問題が「性」に関係することです。黒人差別はダメであると明確に言えます。しかしここに性の問題と宗教的権威が絡んでくると、もう何も言えない世界なのです。ゆえにLGBTに関する運動がいかに広まろうとも、何か劇的な進展があるとは思えません。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年2月下旬号「LGBTと武士道」-2
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。