技術の用い方
日本は海洋資源大国です。海底にはたくさんの鉱物資源やエネルギー資源が眠っております。それらを開発しない手はありません。しかし日本政府はほとんど何もしておりません。技術の問題ではありません。世界有数の技術を「いかに用いるか」という戦略的発想が欠如しているのです。
例えば昨年、ポール・アレンという方が亡くなりましたが、彼は沈没した戦艦武蔵を探し出した海底探査チームのリーダーでした。深海に潜る丸っこい機体を開発し、それを具体的なプロジェクトの中で活用し、大きな成果を挙げたわけです。
日本はそういうところにお金も技術も使いません。戦艦武蔵についてです。敵国であった米国人の孫に探してもらったのです。私はアメリカでとても情けない気持ちになりました。日本の親分さんたちはどこを見て政治をしているのだろう。そう考えてしまいます夢と感動を与えるプロジェクトに、お金も技術も「出し惜しみする国」、それが日本なのです。とても残念です。
リーダー・シップ
海に沈んでしまった財宝や、海底に眠る資源を探索することはとても大切な事業です。多少のコストはかかっても、自国が責任を持って行うべきものだと思います。自国で使うものを自分たちで掘り出すのです。当たり前ではないでしょうか。
この点について、私たちの総理大臣はそういうお話を国民に向けてされないのです。あまりにも単純明快だからでしょうか。資源や食べ物がどれだけ大切で、日本はこれからそれらを確保するためにこういうことをいたします、海ではこれを、陸ではこれを、行います。貿易ではこういうことをします、といった明快なビジョンです。これを語らない。
国会で何をしているか言えば、公文書を変えたとか統計でうそをついたとか、そんな話ばかりです。私たちは税金ばかり払わされておりますが、その明確な使途も示されておりません。挙句には「最近の若いのは何とかかんとか」と言っております。逆です。問題は最近の若者ではなく、彼ら自身でしょう。
宝を活かす発想
日本は海洋資源に恵まれた国です。鉱物資源やエネルギー資源に加え、貴重なタンパク源としてのクジラもたくさん泳いでおります。陸に目を向ければ、素晴らしいお米を作る農家や農業に情熱を注いでいる若者たちがたくさんおります。
宝の持ち腐れ状態です。ここに思い切った予算をどんとつけて、様々な規制を撤廃しながら、開発と運用に力を注いでいく。それが出来ないと、日本の将来はますます危ない。
私たちはどれほどボケてしまっているのでしょう。私たちの国は何をやっているのだ、と大声をあげて問いたいと思います。特に内閣の皆さん、総理大臣、日本の将来についての願望と夢、そしてビジョンを立ててほしいと思います。国際捕鯨委員会からの脱退は英断です。しかしその発想をさらに前に進めていくための大戦略が求められているのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年2月上旬号「クジラと海洋資源争奪戦」-6
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。