独立前の加盟
日本が国際捕鯨委員会(IWC)に加盟したのは1951(昭和26)年です。当時は国連にも加盟しておりません。独立前の加盟だったのです。なぜこのような奇妙なことが起きたのでしょうか。
理由は簡単です。アメリカは日本が弱体化し、国の建て直しが出来ていない時だからこそ、IWCに強制的に加盟させ、捕鯨をやめさせようとしたのです。この委員会に入り静かにしていれば、占領も長引かないし、国連にも入ることが出来るよ、とでも言っているかのようです。一方の日本は、独立したくてウズウズしていましたから、この話に飛び付いたのだと思います。
目に見える貢献
日本が置かれた当時の状況を考えれば、どこかの国際機関に加盟することは、国際社会の一員となったことや世界に認められたことの証である、と考えられたのかもしれません。この発想は実は今でも変わっておりません。日本は「国際」とか「グローバル」といった言葉にとても弱い。それがないと生きていけないような顔をしております。何かが国際的になることは、常に良いことなのでしょうか。立ち止まって考える必要があると思います。
国際ではなく、まずは「日本」を主語にすべきです。例えば、日本は莫大な資金提供を通して、世界各国・地域に対していろいろな食べ物を寄付しています。それはものすごい量です。しかし、それらは全て、薄い空色の袋に入れられて国連のユニフォームを着たお兄ちゃん、お姉ちゃんが配っているわけです。
これを日本の国民が、例えば、日本の若者が日本の日の丸をつけて、小麦粉や米を入れた大きい袋に日の丸をつけて持って行ったらいい。どうなるでしょうか。それだけで日本という国への尊敬が高まります。それは日本国民にとっても大いなる喜びとなります。安倍さんも大喜びでしょう。何もかも国連を通すことはないです。
脱退をめぐる評価
IWCからの脱退について、水産庁は「IWCは機能不全」だと言い、外務省は「国際的信頼を失う恐れがある」と抵抗しました。脱退に反対する人々の中には、この脱退があたかも1933(昭和8)年における国際連盟脱退と同じであるかのように言う人もおります。しかし国際連盟からの脱退とIWCからの脱退はランクが全く異なる話です。
IWCからの脱退は英断です。日本にとっての最悪の選択は、日本が占領中にIWCに押し込まれたことでしょう。クジラを獲ってはいけないのだったら、次はマグロを獲ってはいけないとなりますよ。マグロの次はうなぎでしょう。日本人が食べたいものがどんどんとなくなって、チリやノルウェーからサケを買うだけの国になってしまいます。冗談ではございません。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年2月上旬号「クジラと海洋資源争奪戦」-2
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。