真相
日本ではマティス国防長官の辞任が大きく報じられております。トランプ大統領の片腕として、大きな信頼を得ていたと思われるだけに、今回の辞任劇が何を象徴するのかと、日本ではありとあらゆる陰謀論が囁かれています。
しかし彼については、正しく表現するとすれば「辞任」というより「解任」されたという方がより正確です。そしてこれは、米国では何も珍しいことではなく、政治の世界でもスポーツの世界でも良くあることなので、その真意を追求することにそこまで意味はありません。
「辞任だ、辞任だ」と大騒ぎするのは、アメリカの大統領制や政治についてお分かりになっていない人たちの戯言です。誰を任命し、誰を解任するかは、いわばプロ野球の監督と同じ感覚です。出場させた選手がホームランを打つか、三振するかで、その後の選択に違いが出るでしょう。
アメリカ流大統領制
日本では誰かが解任されたり、職を外れたりすることは、左遷や落第とイコールで考えられております。それが重なると、内閣の信任問題になっていく場合もあります。
しかしアメリカはそんなシステムではございません。大統領が気に入らなかったらクビです。「国防長官マティスさん、あなたは私がやりたいことに反対なのですか」「反対ですよ」「じゃぁ、あなたはもう必要ありませんね」、という世界です。
大統領は自分のやりたい政策を持って国民に選ばれ、当選しているのです。それを実現するために側近たちを選ぶのですから、反対する者をそもそも側近として採用することはないでしょう。
誰が騒ぎ立てているのか
日本人が持つもう一つの偏見は、マティス氏のような人物は貴重で、得難いものだ、という見方です。マティス氏は私がいるスタンフォードのフーヴァー研究所におりましたので、ホワイトハウスに行かれる前に色々とお話をされました。話が分かりやすくて「素晴らしい人だ」と思っていました。
しかし、皆さん、アメリカ軍の層は日本人が想像する以上に厚いのです。マティス氏は確かに素晴らしい人物で能力も高いことは間違いありませんが、アメリカにはあと100人ぐらい彼と同じくらい出来る人がおります。
言い方を変えますと、マティス氏の代わりはまだまだいるのです。「マティス、マティス」と言っているのはトランプ嫌いのフェイク・ニュースです。そのネットワークが「それ見たことか、マティスのように優れた将軍さえもトランプは嫌いだ」と言っているのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年1月下旬号「日本独立への道」-3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。