純粋培養
日本社会において評価される人はほとんど決まっております。それは日本の有名校で教育を受け、有名企業で働いている人たちです。日本社会の中でぬくぬくと育った、いわば「純粋培養」されたお兄ちゃんやお姉ちゃんが評価されるのです。気持ちは分からないでもありませんが、これを延々と繰り返している日本はすでに劣化状態にあると言えるでしょう。
エジプト王朝はなぜ潰れたのでしょうか。その最大の理由は近親相姦です。外の血を入れなかったのです。日本も気を付けないといけません。日本の名門大学と有名企業の関係は近すぎます。その中だけで物事を決め、仕事を回しているのです。東大、京大、阪大といった旧帝国大学、慶應や早稲田など有名私立の卒業者じゃないとトップになれないような、そんな雰囲気が今もずっと続いているのです。
考え方や価値観も硬直化しているのでしょう。小さな世界で出世を競い合っていますが、世界水準で考えると全く歯が立ちません。日本社会はすでに劣化が始まっているのです。
外の血を入れる
劣化システムから脱却する一つの方法は、外の血を入れることです。外部から人を採用するのです。学歴だけで人を見てはいけません。
日本語に「抜擢(ばってき)」という言葉がありますが、日本にはすでに本来の意味での「抜擢」はありません。これが日々起きている社会がアメリカです。若造が部長になる社会なのです。理事長といった長も、内部からではなく外からやってくる傾向が強い。
すなわち、アメリカは「血を混ぜる」発想で動いているのです。スタンフォードの学長を決めるときも大抵は外からです。フーヴァー研究所の所長さんもほとんどが外からです。下から積み上げていくことは日本では美徳ですが、組織としては弊害が大きい。新しいことに挑戦することができません。新しい血を入れることは、その組織のDNAを少し大きくするとか、増やすとか、補強するとか、そうしたイメージなのです。
可愛い子には旅をさせよ
子供の教育にとっても外に出すことが大切です。余裕があればインターナショナル・スクールに入れるか、留学させるのが良いでしょう。それが重要です。
インターナショナル・スクールは、日本では年間250万から300万円ぐらいかかります。しかし若いときに、例えば10歳より前の段階から、1日5、6時間と英語を聞いていますと、英語はもう日本語と同じぐらいのレベルになるでしょう。子どものときに覚えた言葉は一生忘れません。口の周りの筋肉の動かし方も自然に覚えることができます。
英語はまた世界言語です。英語が出来るだけで選択肢が広がるのです。高校卒業前に、あるいは中学を卒業した時点で、「さあ俺はアメリカに行こうか、イギリスに行こうか。スイスでも良いし、シンガポールも面白いかもしれない」などと、自由な発想で将来を展望することができるのです。世界中の名門校に挑戦することもできます。
日本の子供たちが、日本とアメリカだけではなく、新しい世界にウワッと広がっていく。その方がワクワクしませんか。東大、京大に入らないといけないというのはもう古い。お金はかかりますが、インターナショナル・スクールや留学に子供を出した方がよろしい。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2018年11月上旬号「働き方改革と歴史」-4
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。