招聘事業
日本人学生がアメリカに留学するのと同時に、アメリカの知識人たちを日本へ招聘する事業も行われました。その大きな推進力となった人物が、ロックフェラー3世(1915〜2017)です。彼が日本に残したものは数多くあります。代表例の一つは、六本木にある「国際文化会館」です。
ロックフェラー3世は石油事業にて世界的な大富豪となりました。当時、世界で1、2位を争う大金持ちだったと思います。彼は第二次世界大戦で海軍に勤めておりましたが、日本の占領に関しても最初から色々な委員会に顔を出しておりました。
ロックフェラー3世の問題意識は、大日本帝国として富国強兵を成し遂げ、気狂いのようにアジアを侵略した恐ろしい日本人を、いかに「アメリカ陣営に引き込むか」でした。それで学者や経済人、政界人らが集って、話し合いができる場所を作りましょう、ということになったのです。
国際文化会館
そこでロックフェラー3世が、当時のお金で約2億6,000万円ほどを出し、日本からも1億円出させて作ったのが、現在の国際文化会館です。場所は岩崎財閥が持っていた六本木の一等地でした。当時の2億6,000万円は、現在の価値で言えば数千億円でしょう。それを自分のポケットマネーで出した。
国際文化会館には美しい建物と宿泊所があります。レストランも最高に美味しい。素晴らしい庭園もあります。あれを見れば誰でもこのグループに入りたいと思うはずです。
彼は日本の美をあえて残しながら、あのような建物を建てた。それもまたロックフェラー3世のなせることなのでしょう。
デイヴィッド・ロックフェラー
日本のソフトパワー外交
日本が持つソフトパワーは米国の比ではございません。私たちの文化は3000年の長い時間をかけて作られてきたものです。遺伝子の中に蓄積されてきた日本文明の真髄、その美意識はどの国にも、誰にも真似できないことだと思います。
このことを永田町の先生たちは理解しているのでしょうか。これを世界に発信するためにはどうすれば良いか、真剣に考えているのでしょうか。世界各国を味方につける力として、これほど効果的なものはありません。
米国のソフトパワー戦略を知れば知るほど、それが展開できていない日本政府に大きな苛立ちを感じます。アメリカの歴史はたかが300年ほどの歴史でしょう。私たちは圧倒され続けて良いのでしょうか。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2018年10月下旬号「米中文化戦争」-4
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。