海底ケーブル
日本の国際通信の多くの部分は「海底ケーブル」に依存しております。このことはほとんど知られておりません。ケーブルは私たちにとっての生命線です。
海底ケーブルとは、簡単に言えば、海底深くに埋められている分厚い電話線です。その中に光ファイバーがぎっしりと詰まっております。そして、ものすごい量の情報が光ファイバーを通してやりとりされております。
海底ケーブルは昔、「海底電線」などと呼ばれていました。開発したのはイギリスです。1840年代に遡ります。当時のイギリスは大英帝国を築いておりましたが、ロンドンがあるブリテン島を起点に、海底電線が世界中に広がっておりました。
生ゴム
電波を通すのに最も適したもの、それは当時で言えば銀でした。しかし銀は高価なため、電線などに用いることはできませんでした。実用的だったのが銅です。英仏海峡を通す電線には銅を使いましょう、ということになりました。
しかし銅線を生で使うわけにはいきません。何かで囲む必要があった。そこで目をつけたのが生ゴムです。当時、生ゴムはポルトガル人たちがブラジルで発見して以来、ポルトガルの独占状態でした。そこにイギリス王国が介入しました。ブラジルに送られたプロの植物ハンターは、ゴムの木、約七万株ほどを入手してイギリスへ持ち帰ります。
王立の植物園ではその後、大規模な実験が始まりました。品種改良を重ね、良いゴムの木を作り上げました。そしてそれを東南アジアの植民地に持ち込み、栽培を始めました。プランテーションです。生ゴムの大量生産に成功した英国は、それをありとあらゆるものに使っていきます。海底電線はごく一部でして、生ゴムは軍隊を支える装備品などにも使われました。
対テロ対策
さて、海底ケーブルに頼らざるを得ない状況が続く日本ですが、そのテロ対策はザルです。簡単に切断されてしまいます。実際にそれを切る道具もあります。第一次世界大戦、第二次世界大戦中にも使われています。
現在は相当深く埋め込んでいるので、そこまで簡単ではないかもしれませんが、ケーブルを切ろうと思ったら時限爆弾のようなものをセットして行えばすぐでしょう。爆弾でなくとも、大規模な海底火山や地震が起きたら一発で終わりでしょう。それだけ脆弱なシステムの上に我らの生活が成り立っているのです。
アメリカやロシアのように衛星を使ってやりとりをされた方が良いのではないでしょうか。衛星も簡単に撃ち落とせますが、それは海底にあるものを爆破するより、はるかに難しいでしょう。
西鋭夫のフーヴァーレポート
サイバー戦争(2018年3月下旬号)-6
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。