誰が守るのか
サイバー攻撃に対して抑止力が効かないとすれば、対策はないのでしょうか。防衛部隊を作ることくらいしかできないかもしれません。しかし今度は、そうした対策を民間でやるのか、国家でやるのか、という議論が出てきます。
国家がやって当然だろうと考える人もいるでしょう。しかしサイバー空間の防衛は監視を伴うものです。ゆえに、これを徹底的に行えば行うほど、今度は国家が情報を管理し、国民を徹底的に監視していく、そんな社会が出来てしまいます。中央集権的な国であれば問題ないでしょう。しかし民主主義国家では厳しいでしょう。
国家がやらずして、民間企業にそこまでの力があるのかどうか、という論点もあります。例えば日本には世界的に有名な銀行や世界レベルの企業がありますが、そういった企業でさえ、自前でどれだけ防御できるかは分かりません。
技術漏洩
世界水準で見たら各企業が持つサイバー対応能力は赤子と同じくらい低い状況でしょう。すでに日本企業からはたくさんのものが盗まれております。日本が誇る技術力も流出している、あるいは筒抜けになっていると思った方が良いかもしれません。
技術関係については特許庁が管理しているから大丈夫かというと、そうでもありません。特許庁自体がサイバー攻撃を受けたら終わりです。
私とは分野が違いますが、人工的な「目」を作る研究をしている友人は、その成果について特許庁にはとても出せないといっていました。出した途端、すっぱ抜かれてしまうからだと言っておりました。
米国の国防総省ペンタゴンの情報が漏れる時代です。そんな凄腕ハッカーにかかったら、日本企業も、日本政府の秘密もあっという間に暴露されてしまうでしょう。
攻撃の対象となった映画
具体例を出しましょう。2014年の話になりますが、金正恩を暗殺するコメディー映画を配給した「ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント」に対して、ハッキングが行われました。
この映画、アメリカでも少し話題になりましたが、アメリカ人の多くは笑って見ていました。完全に馬鹿にした態度でした。ちなみに私はそんなアメリカ人に対して、相手がアフリカの国の大統領だったら同じ映画を作ることができるのですか、と聞いたことがあります。彼らは黙ってしまいました。
怖い話は映画関係者たちのことです。ハッキングによって、ソニーのお偉いさんたちのEメール内容が全て暴露されてしましました。誰がどんなことを言っているのか、悪口も含め、全て暴露です。人種差別の問題と相まって、私はもう恥ずかしく、情けない思いでした。
西鋭夫のフーヴァーレポート
サイバー戦争(2018年3月下旬号)-4
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。