サイバー攻撃の脅威
私たちの生活はインターネットに依存しております。パソコンやスマートフォンがウィルスに感染し、情報が流出したら大惨事です。個人だけの問題ではありません。2015年には何者かによる不正アクセスにより、日本年金機構から125万件分の個人情報が流出しました。最近では、コインチェックから仮想通貨が盗まれる事態も発生しております。
サイバー攻撃は、直接人体を攻撃するのではなく、生活の基盤となるインフラやシステム自体を標的とします。例えばウクライナでは、2015年、サイバー攻撃により大規模な停電が発生しました。
現在はすでにサイバー戦争の真っ只中にいるとしても過言ではないでしょう。後年の歴史家たちが今日の状況を振り返るなら、おそらく「第一次サイバー大戦」とでも呼ぶのではないでしょうか。
技術大国アメリカ
この戦いの中でも抜きん出た技術力で世界を圧倒しているのは米国です。軍事大国であり、経済大国でもありますが、技術においても超大国です。
米国内でもハッキングに関する様々な情報が流れておりますが、ことの真相は半分も分かっておりません。例えば、どこの企業がサイバー攻撃を受けて、これだけの個人情報が流出した、という報道は流れてきますが、どのような攻撃があったのか、そして流出した個人情報がどのように用いられたのか、といった具体的なことは何も出てきておりません。そうした情報はサイバー戦にかかわることだから言えないのでしょう。
現在の私たちが想像出来るサイバー攻撃は、最先端のサイバー技術と比較すると、火縄銃くらいのものだと思われます。すでに最新のサイバー技術は米軍の中で実用化されています。その技術は米軍のトップシークレットでしょうから、簡単には民間におりてこないでしょう。
火縄銃と核兵器では話にならないように、今後、このサイバー分野はさらに大きく進化を遂げるものと予想します。米国の技術力に対して、どの国も歯が立たない状況が生まれつつあります。
仮想敵国
オバマ政権時代から、アメリカは中国によるサイバー攻撃を注視しておりましたが、トランプ政権となりその傾向が一層強まりました。
アメリカからすると中国は巨大な市場であり、可能性に満ちた競争相手でした。しかし、トランプ政権となり、中国はいわば仮想敵国のような位置付けとなりました。中国の鉄鋼やアルミに対しては関税を引き上げようとしています。外交的には北朝鮮の後ろ盾となっているのだろうと、中国を名指しで非難しております。
中国から米国の利益をいかに守るのか。サイバー戦略も含め、米国の軍事・安全保障政策は対中政策を中心として大きく変わっていくでしょう。
西鋭夫のフーヴァーレポート
サイバー戦争(2018年3月下旬号)-1
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。