大日本帝国の人口政策

by 西 鋭夫 September 22nd, 2021

出生率5.0を目指せ


戦時中の日本は積極的な人口増加政策を推進しておりました。昭和35年までに、日本国内の総人口を1億人にするという政策です。出生率を上昇させるため、結婚年齢を3年早める、夫婦の平均出生児数の目標を5人とする、避妊を禁止する、といったことが奨励されておりました。

これらは全て戦争遂行のための政策です。すなわち、兵隊の数を増やすことに大きな狙いがあった。私のところは兄弟6人でした。男二人、女四人です。お母さんは健康でしたし、私たちを生んだときはまだ食べ物もありました。お金持ちでもありました。

しかし戦況が厳しくなる中、状況は変わってきます。食糧事情ももちろん厳しいです。そんな中、女性が子供を三人、四人も産むと、体はぼろぼろです。十分なタンパク質も取れておりません。子供がすくすくとお腹の中で育つために必要なものはタンパク質です。それが無かったときですから、大勢の女性が三人目を産んだとき、命を落としました。赤ちゃんも多くのケースで助からなかった。


食糧難


大本営はまさかそんなことまで考えていない。戦争のための政策なのですから、女性の体も、子どもたちのことも考えることはなかった。敗戦した時のことも、もちろん考えていません。

戦争が終わったとき、日本の人口はワッと増えていましたし、外地からも日本人がたくさん帰ってきましたので、日本全体が深刻な食糧問題に直面していた。飢えた人がいっぱいいました。

日本にやってきたマッカーサーは食糧問題をなんとかしないと大暴動が起こると考え、アメリカから必死で食糧を持って来させた。給食にはスキムミルクに、アーモンド、乾燥した果物などが並びました。スキムミルクは不味い。あまりの不味さに残す子どもがおりましたが、私はそれをもらって飲みました。


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引き継がれた愚策


数年前、ある政府関係機関の長官とお茶を飲む機会がありました。彼は日本の人口を増やさないといけないと言う。私は、「先生、日本の人口はこのぐらいがちょうど良いのではないですか。分け前も多くなります」と言ったら、それでもなお人口を増やさないといけないと仰っていました。

その人が言うには、子どもをたくさん産むと家計が大変になるから、三人目から税金を半分にし、四人産んだら所得税を無しにする案を考えているとのこと。そうすると、皆さん子どもを生みますよ。そんなことを言う。

ずいぶん乱暴な議論だなぁと思いました。子どもたちが全員、高校にいき、大学まで行くとすれば、家計は大赤字です。この人は何を考えているのだろうと思い、先生のご家庭はどうですかと聞くと、子どもはいないという。なるほどと思いました。実体験のない人が高級官僚として働いている。人口政策を考えるなら、経験豊富なお母ちゃんたちを有識者メンバーに入れないといけない。



西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年6月上旬号「人口爆発」-12




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。