From: 岡崎 匡史
研究室より
1946(昭和21)年2月16日(土曜日)の夕方、インフレ防止のため「金融緊急措置令」が出され、翌17日(日曜日)から「封鎖預金」が実行された。
銀行から自由にお金が引き下ろせなくなり、同時に新円切り換えも行われた。世帯主が1ヵ月のうちで銀行から引き下ろせる金額の上限は300円。それ以外の世帯員は100円迄とされた。敗戦から立ち直れていない日本国民にとって、大きなショックをもたらした。
さて、問題は、税金をどのようにして支払えばよいのか。銀行からお金が下ろせないのだから、税金を払いたくとも手元にお金がない、、、
以下の「封鎖預金での納税手続」(註・旧漢字は常用漢字で表記した)という史料を読むと、答えが見えてきます。
納税方法
封鎖預金での納税手続
昭和21年分の所得税、営業税及同附加税の第一期分は税法改正の結果、本年に限つて9月末迄に納税することになつております。
左記手続をよく御覧の上、一日も早く納税の準備をして完納なさる様御願ひします。
納期日が過ぎますと手続が面倒になります。
記
1. 前期の諸税金は納期中であれば、第一封鎖預金、第二封鎖預金の何れからでも附加税と共に納税が出来ます。
2. 納税告知書を預貯金通帳と金融通帳と共に預け先の金融機関へ示して封鎖小切手の発行を受け市町村収入役へ納付して下さい。
3. 金融通帳に記載された、家族の名義の封鎖預金からも納税が出来ます。
4. 納期限に遅れると国税と附加税とは別々に封鎖小切手の発行を受け、国税は税務署へ、附加税は市町村収入役へ納付することゝなり非常に手数が掛ります。
5. 納期限後は延滞金を徴収されます。此の場合一旦税務署や市町村役場に出頭して、延滞金の証明を受け、それから封鎖小切手(延滞金は第一封鎖)の発行を受け其の日の内に税務署や市町村収入役に納めなければなりません。
6. 右の手続をふまない場合は延滞金は必ず現金で納めなければなりません。
7. 納税団体に加入の方は納税直後直ちに所属の納税団体に其の旨通知して下さい。
昭和21年9月
税 務 署
市 役 所
町村役場
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。