原爆投下

by 岡崎匡史 July 31st, 2021

blog224.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より

京都、広島、小倉、長崎、横浜、新潟。
原子爆弾を投下する候補都市の一覧だ。

米国ミズーリ州に「トルーマン大統領図書館」がある。
トルーマン大統領図書館では、原爆投下に関する極秘文書がインターネット上で掲載されている。

「[The Decision to Drop the Atomic Bomb]」(原爆投下への決断)というサイトである。

原子爆弾について調べようと思ったら、必ずといってよいほど参照されている。

原爆


トルーマン大統領図書館の史料によると、原爆候補地が絞られていく過程が見えてくる。

京都は日本人に精神的衝撃を与えるには「絶好の標的」とされた。しかし、アメリカ軍は京都の歴史的・文化的重要性を考慮し、美しい京都を原爆投下候補都市から除外。

なぜ、新潟は外されたのか?
それは、商業都市としては新潟は規模が小さく、米軍基地からの飛行時間がかかるからだ。

天皇陛下のお住まいである江戸城跡の皇居という選択肢もあった。しかし、米国は混乱を避けるため皇居を攻撃候補から外す。米国は、皇居については細心の注意を払っていた。

そして運命の日、8月6日の広島に原爆が投下され、8月9日にはカトリックの聖地「長崎」に原爆が標的となった。推定死者、7万4000人。

8月9日の原爆は、小倉に投下される予定だったが、当日の小倉市街上空は雲海に覆われていたため、第二目標の長崎が爆心地となった。

トルーマン大統領への抗議


原爆投下は、アメリカ国内でも物議を醸す。「アメリカ・キリスト教会連盟」は、トルーマン大統領に抗議の電報を打った。


「多くのキリスト教徒は、日本の都市に対する原子爆弾の使用に深く心を痛めております。なぜなら、原爆の使用は必然的に無差別破壊をもたらし、人類の未来にとって極めて危険な前例となるからです。連盟会長オクスナム主教と同連盟の恒久的平和委員委員長ジョン・F・ダレスは、報道向けの声明を準備しており、明日、次のことを強く主張するつもりです。
 原爆は人類に託されたものと見なすべきであり、日本国民に対して新型爆弾に関する事実を確認させ、降伏条件の受諾に十分な機会と時間が与えられるべきであること。そして、日本国民にこれ以上の原爆による破壊がもたされる前に、日本が最後通牒について考え直す十分な機会が与えられることを謹んで要請する次第です」


トルーマンはこのアメリカ・キリスト教会連盟の要望に対して、8月11日、次のように回答した。


「8月9日付の電報を頂き感謝いたします。
 私ほど原爆の使用に心を痛めている人間はいません。しかし、私は日本の宣戦布告なき真珠湾攻撃と戦争捕虜の虐殺にも非常に心を痛めました。日本人が理解する唯一の言葉というのは、私たちが日本人に対して原爆投下をすることのように思えます。獣(beast)と接するときは、それを獣として扱わなければなりません。非常に残念なことでありますが、それが真実です」


トルーマンは日本人を「獣」と譬え、「人種差別」をむきだしにして原爆投下を正当化した。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
・"Memorandum For: Major General L.R. Groves, Subject: Summary of Target Committee Meetings on 10 and 11 May 1945." 12 May 1945, Harry S. Truman Vertical File, Harry S. Truman Library, Independence, Missouri, USA(hereafter cited as TL, MI).
・"Correspondence between Harry S. Truman and Samuel Cavert," 11 August 1945, Harry S. Truman Official File, TL, MI.
・有馬哲夫『アレン・ダレス 原爆・天皇制・終戦をめぐる暗闘』(講談社、2009年)
・マイケル・シャラー『マッカーサーの時代』(恒文社、1996年)
・山極晃「原爆投下目標の決定」『国際問題』第234号、1979年

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。