原発外交

by 西 鋭夫 May 17th, 2021

トルコとの共同声明


安倍政権が原発外交を積極的に推進しております。2013年10月、安倍総理はトルコを訪問し、エルドアン首相との間で共同宣言を発表しました。ここには原発建設に関する協力がしっかりと盛り込まれています。

共同宣言の1ヶ月前、トルコのイスタンブールは次期オリンピックの開催地として落選しました。その地を射止めたのは東京でした。2020年のオリンピック開催地が決定した1ヶ月後に、日・トルコ間で共同声明が発表されました。水面下でのさまざまな政治的動きが想像されます。

総理はトルコに続き、ベトナムやタイ、インドネシア、そしてインドなどのアジア諸国を歴訪しながら、日本の原発外交をさらに推進しました。2015年の12月にはインドとの間で、原発輸出を念頭にした日印原子力協定が締結されました。


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事故の責任


安倍総理はトルコ訪問の際、もしトルコで日本産の原発に不備があったり、事故が起きたりしたら、日本が責任を持って処理しますよ、とお話されました。国外に作った工場で事故が起こったら、日本国民の責任になるのでしょうか。こんなにもおかしな話が、原発外交の中で出てくるわけです。

責任と言っていますが、その責任の中身もわかりません。総理はまた、福島での教訓を生かす、ともおっしゃっていましたが、その教訓の中身もわかりません。トルコの地下では、巨大なプレートがぶつかり合っています。いつ大地震が起きてもおかしくありません。そんな中で、3.11級の地震が起き、原発に問題が生じたらどうするのでしょう。

原子炉の冷却には大量の水が必要ですが、トルコの場合、黒海の近くに作るのでしょうか。あるいは地中海に面したところに作るのでしょうか。事故が起きれば、水が汚染されます。それが黒海か、地中海かはわかりませんが、日本はこれについても責任を持つというのか。


原発外交の背景


原発輸出が積極的に動き出したのは、3.11の後のことです。福島の事故で、日本国内で新たな原発を建設しようとすると、必ず大きな批判を浴びることとなった。例えば、今、青森県の下北半島にある大間というところで新たな原発が建設されていますが、この建設に大反対しているのは対岸の函館です。裁判にまで持ち込もうとしている。

これだけの反対があれば、国内での原発建設はかなり厳しいのが現状でしょう。すなわち、国内市場の収縮が、原発輸出の大きな要因の一つであると言えると思います。

もう一つの背景としては、日本の持つ原子力技術の保持が挙げられるのではないか。日本で新たな原子炉が作れないとなれば、日本の持つ技術はどんどんと衰退していきます。これを維持し、さらに発展させるためには、原発を作り続ける必要がある。原発についての研究・開発が廃れないように、原発外交を積極的に行う必要性が生じたのではないか。



西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年3月上旬号「忘れ去られた福島」− 7




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。