安倍政権の応援団

by 西 鋭夫 May 12th, 2021

マスコミから消えた政権批判


政治家の皆さんが「政治的中立」を理由にマスコミの姿勢を問い正す。これは政治的にも、民主国家の姿としても尋常ではない姿です。

今の日本で「政治的中立」というのは、安倍政権にとって都合の良い話を指します。都合の悪い話は「偏りがある」として避けられたり、避難の対象となったりする。私は戦前・戦中・戦後の歴史をずっと詳細に見ていますが、この姿は大本営がしてきたことと同じです。

大手マスコミは政権から睨まれることを恐れ、情報を精査したり、検証したり、真相を追求したりすることを止めてしまった。その結果、日本には骨のあるニュース番組がほとんどなくなった。24時間、ニュースだけを流す番組もない。日本だけでなく、アジアのこと、世界のこと、たくさん伝えないといけないことがあるはずなのに、日本にはニュースがほとんどない。その代わりに日本では朝から晩まで娯楽番組が中心です。


御用学者の台頭


政治的な意見や主張が民間から消えたわけではありません。しかし、マスコミにチヤホヤされる素晴らしい学者先生として崇められているのは、安倍政治を最も肯定的に評価できる先生です。

彼らはかつて、民主党を厳しく批判していましたが、今度は自分たちと心情が合う安倍総理が出てこられたためもあり、静かに過ごしていました。学者の良心に従って、学術研究に励んでいたのでしょう。

しかし、最近では、わざわざ出てきて安倍政治を擁護する議論を展開している。彼らの話をじっくり聞くと、批判的かつ客観的に自民党を捉えるのではなく、もはや応援団のようになっています。通すことが難しい法案などが出てきたときに、まず出てくるのが応援団です。御用学者に変わってしまった先生方に価値はなくなりました。


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政治的言論空間の行方


このままでは、政治的な議論がまともにできない国になってしまうのではないか。政治的中立とは、現政権にとって都合の良いことなのですから、反対する意見や、厳しい批判などはどんどんと社会から消えていきます。マスコミからも、優秀なジャーナリストがどんどんと海外に逃げていきます。ジャーナリストを目指す人も少なくなっていくでしょう。今後の日本の政治的言論空間を誰が、どう守っていくのか。

御用学者が幅を利かせる学術界にも大きく期待することは難しい。産業界は基本的には自民党べったりです。ほとんどのマスコミも政府に迎合している。

私が放送しているこのフーヴァー・レポートが禁止となったら、「西、良くやったな」と褒めて下さい。



西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年3月上旬号「忘れ去られた福島」− 6




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。