水大国
私たちは水に関しては世界の大富豪です。世界各国・地域を眺めてみますと、水不足に陥っている国や地域が非常に多い。ほんの少しの水をめぐってでも、争いが起きている中、日本では1日一人当たり、平均で300リットルもの水を使っています。
水のないところから来た外国人たちは、日本に溢れている水にびっくりしています。コーヒーショップでも、レストランでも大抵のところは水がタダで出てきます。しかも美味しい。こんなこと、世界のどこへ行ってもありません。
私自身も子供の頃は温泉に行けませんでしたので、初めて温泉に行った時には驚きました。熱湯がジャージャーと溢れている。もったいないなぁ、と思いました。流れるお湯を止めて、貯めれば良いのにと本気で考えていた。シャワーも1時間浴びようが5時間浴びようが、風呂に何時間入っていても水と湯は永遠と思われるほどあります。日本は水大国で、日本人は水に不自由なく暮らしてきました。
水の値段
世界では、安心して飲める水は高級品です。学生にアラブ圏出身者がいましたが、水は石油の5倍から6倍すると話してくれました。日本に初めて来たときは、ペットボトルに入った水が駅にも、スーパーにもたくさんありとても驚いたようです。しかも、美味しいのに安い。夢のような世界だと、語っていました。
日本のように、川があり、山があり、滝もあり、温泉が溢れている。こんな国はありません。水に対する危機感を肌で感じることはありません。一方、アジアやアフリカでは水を簡単に手に入れることはできません。水をめぐる格差社会は明らかに存在していると思います。
アメリカにも意外と水は少ない。日本は、水という点では世界の超大国です。しかしこれからの世界は、水がある国ではなく、水があるところをコントロールできる国が、世界的な覇権国となっていくでしょう。
途上国では
発展途上国においては、水不足がより深刻な状況になっています。貧困や飢餓で子供たちが亡くなっている。衣食住といった生活の基本を守るための水もなければ、安心して飲める水もありません。
テレビで時々、途上国への募金についての宣伝をみますが、お金や食べ物より、本当に必要なものは水です。お金がない、というのは本当です。しかし、お金は貧しさの根本原因を解決することはできません。食べ物がない、というのも本当ですが、食べ物をそこでいかに作るか、という発想も中長期的には重要です。水があれば、そこで食べ物を作ることができます。土地はありますし、太陽もサンサンと輝いているのですから。
先進国の皆さんは、お金の使い方、援助の仕方を間違ってしまったのではないでしょうか。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2016年2月下旬号「水戦争」− 3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。