南北が統一する日は来るのか

by 西 鋭夫 March 31st, 2021

統一の可能性


朝鮮半島はこの一世紀間、戦争と困難の時代にあったように思います。朝鮮戦争は休戦状態であり、終戦には至っていません。南北双方は、同じ民族でありながら38度線を境に分断されております。

韓国と北朝鮮は近い将来、統一した国家になるのでしょうか。私は残念ながらその可能性は低いと考えています。まず、中国もアメリカも北朝鮮がなくなることを望んでいない。むしろ北朝鮮に存続し続けて欲しい、と考えています。


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可能性があるとすれば、もう一度大きな戦争が起きる時だろうと思います。歴史を振り返ると、分断された国家は戦争によって再統一が図られていく傾向がある。もちろん、勝った方が再統一の担い手になります。この法則は、日本の戦国時代や、明治維新における戊辰戦争にも当てはまる。


第三次世界大戦


現在の朝鮮半島においては、いつ、いかなる状況下で実戦が再開されるのかは、誰にもわかりません。ただ、本当に戦争が起こるとすれば、日本もアメリカとともに、戦争に巻き込まれていくでしょう。北朝鮮へは中国とロシアが入ってくるでしょう。こうなると、もう手がつけられません。北東アジアという地政学的には限定された地域での戦いでありながら、その様相は世界大戦であると言ってよい。

だからこそ、分断されている現状というのが、アメリカにとっても、中国にとっても、ロシアにとっても良いことなのです。分断は、南北朝鮮はもとより、関係各国にとっても利益となっているのです。


日本の選択


そうした中で、日本は北朝鮮とどのように付き合っていけば良いのか。何も強く言えない状況のまま進むのか、それとも転換を図るのか。大きな岐路に立たされているように思います。

北朝鮮からすれば、日本が米国との協力関係をますます強めていくことは大きな脅威でしょう。安倍政権が集団的自衛権の行使を可能にしたとき、金正恩は恐れたのではないかと思います。日本軍の過去のイメージは簡単に拭いきれるものではありません。

短期的な見方や国内政治の力学だけにとらわれずに、中長期的観点から朝鮮半島を捉えること、そして歴史からじっくりと学び取ること。それらを踏まえた賢明な外交政策が求められると思います。



西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年1月下旬号「北朝鮮の情勢」− 7



この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。