日本型貧困社会の到来

by 西 鋭夫 March 8th, 2021

重税


アメリカと日本の貧困状況を比べるといくつかの違いもありそうです。例えば、アメリカでは法人税などが大きな問題になっており、トランプ氏らは大幅な減税を考えている。一方の日本は、まだまだ税金が高くなる傾向にあるわけで、優良企業はどんどんと国外に逃げていく。そうなるとアメリカには裕福な人たちが残りつつ、格差が広がる貧困社会が形成され、日本には裕福な人たちがいなくなるという貧困社会が形成される。


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こうした状況に陥ってもなお、日本人は「皆さんでお手を手つないで幸せになろう」「全員で頑張ろう」と考えるかもしれません。これは日本人特有のとても悪い考え方です。皆さんで仲良く、幸せにはなれません。手を繋いでいたら、全員が溺れます。こんな社会になって欲しくない。

米国ではあり得ません。一人ひとりがお金持ちを目指して、お金持ちに敬意を持ちながら勉強し、自分で動きます。しかし現状は、これが行き過ぎて、貧富の差が増大しております。


将来への願望


格差や貧困問題を本当に解決したいと考えるのならば、社会主義国や共産主義国のような政策を取らざるを得ないのかもしれない。しかし、そうした政策は自由という価値を著しく制限するものです。アメリカは自由を重視し、また自由であるからこそ個人の責任を強調する社会を形成した。良くも悪くも「自業自得」で成立する社会です。

以上のようなことを考えると、日本とアメリカで大きく異なるのは、実は格差やお金持ちに対する個々人の評価基準なのではないか、考えています。アメリカでは、お金持ちへの憧れや自分もそうなりたいという強い願望があります。一方の日本には、お金持ちに対する悪いイメージが蔓延っています。嫉妬や妬み、恨みが渦巻き、互いに足を引っ張り合っている状況です。


金持ちになれない国


日本では大金持ちが潰されます。相続税を例に挙げてみましょう。今米国では「相続税を0円にせよ」という運動があります。現状では半分近く取られています。

相続税については、今の日本も同じような状況です。例えば10億円あるとすると、5億5,000万ほどが支払いの対象になります。頑張って貯めたお金が、相続される度にどんどんと減っていく。私の知人は、田園調布にもう50年前ほどに住んでおられましたが、相続されるたびに土地が3分の1、3分の1となくなっていき、今はとても小さなお家に住んでおられます。

家を売るにもお金がかかり、更地にするにもお金がかかる。お金持ちいじめが過剰な日本では、もはやジャパン・ドリームは夢の夢となっています。若い人たちは努力なぞしなくなるでしょう。そんな国には勢いも魅力もありません。

安倍総理にはこの辺で税制改革という大鉈を振るって頂きたい。大反発を受けるかもしれませんが、歴史に名を残すでしょう。


西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年1月上旬号「アメリカの貧困」− 9




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。