英語力で人を測る国

by 西 鋭夫 November 16th, 2020

英語帝国主義


日本人は英語を甘く見ているのではないだろうか。

2015年、安倍総理は新たに3,000人規模のネイティブ教師を日本に派遣すると言いました。ネイティブと英語で話すことが出来たら、日本の英語教育問題は解決するのでしょうか。解決からはむしろ遠のくのではないか。

塾に行ったり、有名人の学習法を真似たり、映画をたくさん見たりしたら英語が上達するのか。言葉の習得は、自分との血みどろの闘いです。決して楽な道ではない。日本は国をあげて、英語をなめているとしか考えられない。そんな日本人の英語は現在、世界でも、アジアでも最低レベルとなりました。単語を知っている人、文章が書ける人がほとんどいなくなった。

単語と文法にじっくりと取り組み、その後は英語圏へ留学しなさい。旅行に行きなさい。塾に行くお金があったら国外に出ることです。それが上達への道です。


強い意志


学びに対する意志も必要です。60年も前に、私に留学ビザを出してくれたのは神戸米国領事館の副領事でした。

海兵隊出身の彼とは2、3のやりとりがあった他、後は握手をしただけでした。この握手は30秒間続きました。お互いに力を入れ始め、どちらが先にギブアップするかを競ったのです。私も負けまいと力を入れて握り返していました。30秒後に、お互いニタっと笑って終了です。それでビザが下りた。これが英語の試験だったのです。

笑う人もいるでしょう。しかし、今の若者はおそらくTOEFLの試験問題をみて、難しいなぁと逃げてしまう人ばかりでしょう。この先に進むには、英語の力ではなく、根性が必要なのです。それを理解している人は少ない。


日本語を忘れた日本人


TOEFLという試験は日本ではもうほとんど知る人がいないかもしれませんが、米国留学で通じるのはTOEFLだけです。

日本ではTOEFLではなく、優しいTOEICが幅を利かせています。しかしそれでもなお残念なレベルです。参考までに言うと、2015年の新卒内定者のTOEIC平均スコアは、990点中544点です。企業の中には、TOEICの点数で昇進が決まるところもあるようです。


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日本語はどこに行ったのでしょうか。3000年に及ぶ歴史と文化によって培われてきた日本語がいとも簡単に置き去りとなり、挙句の果てには、日本語ではなく英語を話せるかどうかが優秀な人材かどうかの判断基準となる。「おかしい」と、誰も思わないのだろうか。



西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年10月下旬号「日本人の英語力」− 2



この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。