なぜプリウスは売れるのか
フォルクスワーゲンをはじめとして、欧州の自動車メーカーは、排ガス問題を解決したディーゼル車を「クリーンディーゼル」として売り込んでいます。一方、日本のトヨタはプリウスを筆頭に、ハイブリッドカーを前面に出しております。
アメリカはというと、人々の好みは真二つに割れています。一つは、馬力の強い車を好むグループです。メルセデスベンツは500馬力ですから、走り方が違う。燃費は二の次で、高速をビュンビュン飛ばして走ります。馬力を重視するグループは、いわばマッチョの世界。車が筋肉で溢れているようなイメージです。私もこのタイプの車が好きです。
もう一つは、頭が良くスマートなタイプの車を好むグループです。購入するのは主にお金持ちの人。代表的な車はプリウスです。環境に良く、省エネも徹底しています。そんなプリウスが売れています。購入したくとも、予約でいっぱいで1年待ちが当たり前。デザインはというと、私の個人的な評価ではありますが、とにかく格好悪い。
電気自動車の衝撃
プリウスが将来の車の形なのでしょう。格好が悪くとも、トヨタというブランドと性能で売っています。
今後は、さらに進化した電気自動車が登場することでしょう。ガソリンを全く使わない車です。充電については、以前は一晩中かかりましたが、いまは20、30分で充電可能です。
電気自動車の登場は、当然ながら、燃料の入れ替え戦を伴います。ガソリン離れが進みます。私は今後、電気が来て、次は水素になると思っています。技術の進歩を考えると、これは遠い未来ではなく、10年、20年先には実現している可能性が高い。
技術の大革命
今、起きている技術革新の内実はいわゆる「質」だけではないのです。そのスピードに着目して欲しい。開発の時間が驚くほど短くなっている。
日本占領時代のバスは木炭で走っていました。そのあとは、石炭がきて、その後にガソリンが来たわけですが、ここまでくるのにおよそ50年かかっているわけです。しかし電気自動車はこの5、6年で非常に大きな進化を遂げた。現在はトヨタ以外でも、素晴らしいハイブリッド車、電気自動車が作られています。競争は、さらなる技術開発をもたらすでしょう。
取り残される国・地域
しかし、私たちは同時に、この技術革新から遠く離れた別世界があることを忘れてはいけない。新興国や極貧国の存在です。環境に良いか否かにかかわらず、ディーゼル車を欲する国々はアフリカ、アジア、中南米にどさっとあります。
環境のことより、自分の今日、明日の生活が重視される世界です。「ディーゼルでちょっと空気が汚れる。それがなぜ問題なのですか」と聞こえてきます。お隣の大国、中国では排ガスなどのため、オリンピック開催も危ぶまれた過去があります。北京では、オリンピックを前後して、石炭を燃やすことを禁止しました。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2015年10月上旬号「フォルクスワーゲン」− 5
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。