日本の宿命

by 西 鋭夫 August 19th, 2020

心の境界線


私たち日本人は、自分たちと異なるものに対して強く警戒します。その時によくやるのが、自分と相手との間に「壁」を作ることです。今の国際社会では、その壁を「乗り越えること」が善とされていますが、とんでもない。日本人は越えられないし、越えたくもないというのが本音でしょう。日本で難民を受け入れたら、誰もが大きな苦労をする。目に見えています。

日本に来た難民たちは幸せでしょう。命が保証されます。日本は安全だし、食べ物も清潔。医療も発達しています。しかし、命の保証は、心の保証と別物です。難民たちは、5年、10年と日本で暮らすと、故郷に帰りたいと言い出すでしょう。しかし、故郷の政治状況からして帰ることは許されない。難民たちの不満はさらに高まります。


お金で解決


難民受け入れが難しいのなら、日本に残された道は「お金」です。難民を援助している人たちを、お金でサポートするわけです。

支援を受ける国々や人々は、「日本はいつでもお金だけ」と批判するでしょう。実際、何も手伝っていないのではないかと。しかし、難民の受け入れもせず、お金も出さなかったら、日本は国際社会から完全に切り離されます。鎖国です。これを避けるため、日本はお金を永遠と出し続けなければならない。


アジアの難民


遠い国の話は「お金」でなんとか解決できるかもしれません。しかし、アジアとなると話は別です。

北朝鮮の「金体制」をどう見るか。国内政治に不安を抱える中国をどう捉えるか。他の東南アジア諸国に何も問題はないのか。冷静な目で情勢を分析していく必要があります。

何かが起き、難民が大量に発生したらどうなるのか。難民の身になって考えて欲しい。アジアで一番、安全で豊なところを目指します。極東アジアだったら日本しかない。香港に行っても、狭いからどうしようもない。あの国は、食べ物も全て輸入ですから、すぐに底を突くでしょう。


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アジアで難民が生じた際、彼らが最初に目指すのは、黄金の国ジパングです。




西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年9月下旬号「難民」− 8




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。