軍事介入が招いた惨劇

by 西 鋭夫 July 29th, 2020

介入は許されるのか


ヨーロッパに流入した難民の数は、現在(2015年)でも200万人はいるでしょう。この数は今後も増え続けます。 

この状況に対して、ヨーロッパの国々は軍隊や警察を出して、難民を必死に止めようとしていますが、おそらく無理でしょう。これは民族の大移動です。止めよう、と思っても止まるものではありません。

難民は飢えています。後ろへ戻ると死ぬとわかっている。だから「前」しか見ない。行く手に城壁があろうが、鉄条網があろうが、警察が警棒で頭をかち割ろうが、必死です。

この状態を招いた張本人は誰か。アメリカさん、ちょっときつく言いますが、「中東で戦争して、上手く行かなかったから出て行くのか。戦ったあとは、ゴミ扱いか」。アメリカ政府には、中東の今を直視しているのか、と問い質したい気持ちです。難民は今後、1,000万人単位で流れていくでしょう。


誰が、国境を越えようとしているのか


難民の中には、「イスラム国」といったテロリストも紛れ込んでいる可能性は否定できません。これは非常に困難な問題ですが、その前にまずは、私たちが見ている報道内容についても考える必要があるでしょう。

日本の皆さんも何度もテレビで見たかもしれませんが、難民報道の中には「必死に逃げる赤子を抱いたお母さんや小さなお子さん」が必ずといっていいほど登場します。これは確かに事実の一部かもしれませんが、この事実をあえて切り取り、限られた時間の中で私たちに伝える、というマスコミの意図や先導があることも忘れてはいけません。

難民全体をより大きな映像で捉えると、約90パーセントが若い男であることがわかります。おそらく独身の男たちでしょう。10代後半から、20代、30代です。なぜ、独身の男が多いかというと、独身の男しかあの長い距離を歩けないからです。バスや電車はありません。子どもや奥さんを抱えていないので動きが早い。


テロへの不安


北太平洋からも、北アフリカからも、古い漁船やゴムボートに乗った若い男たちがシチリア島やイタリア半島、ギリシャの島々を目指し、そのほとんどが溺死しています。すでに何十万人規模がこの危険な航海のために命を失っているのです。


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困難を生き抜いた元気な体力のある若い男たちがヨーロッパにどっと流れ込んでいる。この状態をアメリカやヨーロッパはどう見るでしょうか。この中にISISのテロリストたちが入っているのは間違いない、と考えるでしょう。受け入れ側の不安は絶えません。地下鉄や宮殿などがテロの対象になるのではないかと、びくびくしているのが現状です。

人道をとるか、安全をとるかの厳しい選択です。表立っては言えませんが、ヨーロッパ諸国の多くは、「俺のところではなく、他の地域へ行け」と内心考えているのではないでしょうか。


西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年9月下旬号「難民」− 2




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。