ピューリッツァー賞
アメリカには優れたジャーナリストを讃えるしくみがあります。もっとも有名なのは、ハンガリー生まれの卓越した米国ジャーナリスト、ジョセフ・ピューリッツァー(1847〜1911)の遺志に基づき設立された「ピューリッツァー賞」です。
ピューリッツァー賞が贈られるニュースは、普通のニュースではありません。一つの事件や事故を、ジャーナリスト独自の視点から踏み込み、掘り下げたニュースです。それには想像もできないような時間と労力がかかります。1年かかるか、2年かかるかわかりません。
受賞者は一生涯、特別扱いされます。ピューリッツァー賞は、ジャーナリズム界のノーベル賞と言えるでしょう。それだけ評価される賞です。
勇気あるジャーナリストの飢え死に
日本には勇気あるジャーナリストを讃えながら、しっかりと評価する賞が皆無に等しい。もちろん、様々な賞があることは知っています。しかし、応募資格や応募方法、審査基準とそのプロセスなど、ほとんど宣伝されていないので、その賞がどんなものなのか誰も分かりません。
強大な権力を批判するような勇気あるジャーナリストは、日本では飢え死に。報われない。メディアには「読ませる記事」がない。だから私は、日本のニュースは実際に新聞紙を広げて読みません。デジタルで十分。
私の好きな『ニューヨーク・タイムズ』紙はデジタルでも読めます。しかし私は、新聞紙を実際に手元に広げて読みます。本気で読みたいと思うからです。
厚さ10 cmの新聞
米国内の新聞で一番評価されているのは、いまだに『ニューヨーク・タイムズ』です。ピューリッツァー賞も多数、出ています。
『TIME』誌や『News Week』誌も有名ですが、『ニューヨーク・タイムズ』には敵わない。『ニューヨーク・タイムズ』が、あれほど大きな所帯を抱えつつも、延々と読まれ続けているのは、やはり質が良いからです。
私は毎週日曜版をじっくり読んでいます。日曜版の厚さは10 cmぐらいあります。読むのに1週間かかります。今後はおそらくデジタル化されていくと思いますが、それでもなお私は紙で読むのが好きです。多くの購読者も同じ意見でしょう。やはり手元で広げて、直に読みたい。読まないといけない。そんなところでしょう。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2015年9月上旬号「米国メディア」− 10
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。