米軍が出す奨学金

by 西 鋭夫 May 18th, 2020

予備役将校訓練課程


米国にはROTCと呼ばれる、米軍による奨学金制度があります。ROTCはReserve Officers Training Corpsです。日本語で言うと「予備役将校訓練課程」でしょうか。

1964年、ワシントン大学のキャンパス内で、同級生といろいろお話しながらキャンパスを歩いていたら、あるとき軍服を着たお兄ちゃんたちが、15~16人で隊列を作り、ライフルを肩にかけて、「ザクッ、ザクッ、ザクッ」と歩いているのです。その中に、友人のビルがいるわけです。「おい、ビル」と言うと、「ヘイ」とか言って、にたっと笑うのです。


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ROTC関連行事のため大学内で離発着する米軍ヘリ


私は戦後の純粋平和主義の神話の中で育っていますから、大学の中に軍服を着たお兄ちゃんたちが、それもライフルを抱えて、行進しているところを見てびっくりしました。

彼らは、将来自分が行きたい軍隊(海軍、空軍、陸軍、海兵隊)に申請して、そこから年間何千ドルの授業料と生活費をもらっていました。すなわち、お金がなくとも大学に行くことができたのです。卒業したら2年間は従軍する必要はありましたが、大抵は将校(オフィサー)として一番下の少尉になっていきました。この制度は全米で行われていました。


ベトナム戦争とマリファナ


それが一時的に止めになったことがありました。ベトナム戦争です。戦争が激化して、若い兵隊たちがどんどんと死んでいきました。あの戦争ほど反対された戦争はアメリカにはありません。

今は中東でもやっていますが、比較になりません。あの戦争は、アメリカが全力を注いでやった戦争です。

ところがアメリカ兵が行きたくない、戦いたくないというので、18歳になった若者たちが行かなくなりました。そこで、徴兵制が導入されたのです。

当然のことながら、学生運動が起こりました。その運動の一つのシンボルになったのが、当時、厳禁されていたマリファナです。マリファナを吸うことが反抗のシンボルになりました。

政府はマリファナを大きく問題視しておりましたが、実際に吸ってみると何も悪いことがないのです。逆に健康になった人もいるくらいです。そこからマリファナの麻薬神話のプロパガンダが崩壊していきます。


ROTCの復活


それと同時に政府に対する不信感が募りました。ベトナム戦争は14~15年続き、アメリカの黄金時代に終止符を打ちました。あの戦争をきっかけにして、裕福だったアメリカが貧乏国になり、国債をどんどんと発行するようになります。この国債を、延々と買わされているのが日本です。

ROTCは再開されつつあり、特にアメリカの州立大学ではほぼ復活しております。アメリカでは、兵隊さんは馬鹿にされていませんし、侮辱されていません。嫌がられてもおりません。軍隊に命令する政治家や大統領が間違えると、米国民は怒りますが、国のために出陣していく兵隊は非常に尊敬されています。日本の皆さんは、ここを理解されたほうが良いです。




西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年8月下旬号「大学ランキング」− 11




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。