一流校の授業料
実際、商売が上手なアメリカの授業料はとても高いです。アメリカの授業料を皆さんが聞いたら、ひっくり返ります。
今、私の娘が大学1年生ですけれど、私がその授業料は払えないと言ったら、娘が「何のためにお父さんに肺が2つあるのですか。1つ売りなさい。腎臓は2つも要りません」と言いました。それぐらい高いです。
先生1人に対する学生の比率があるでしょう。アメリカで「良い」と言われる学校には、先生1人に対して学生は多くて10人、大抵は5~6人です。家庭教師のような世界です。だから授業料が高いのです。しかしお金のない家の人もお金を借りて、みんなそこの大学に行きます。競争でそこが1番、2番になっていますので、そこに行くと、うちのばか息子・ばか娘が優秀な人材となって4年後に出てくると、親にはもうわかっているのです。
「国立」大学という意味
日本はどこに入れても同じですが、私がよくわからないのは、国立大学の授業料の安さです。これはなぜでしょう。誰かに説明してほしいです。私は私立に行きましたが、私立の授業料と国立・県立の授業料は3倍ぐらい違います。
国立はなぜ授業料が安いのですか。国立というのはどういう意味ですか? 国家に奉仕する人材を育てるから安い?
No。私たちも奉仕しています。絶大なる奉仕をしています。福澤諭吉先生も奉仕されました。大隈重信も新島襄も奉仕しました。日本政府はそんなことを全く考えずに、国立・県立・市立などと言っているのです。
私から見ると「おまえたちは自分たちでお金を出して行け」の世界です。税金で大学に通う権利はどこにあるのですか。日本では、ここを誰も質問しない。アメリカには国立大学なんかありません。
アメリカの事情
もちろん州立はあります。市立もあります。ところが優秀なのは、全部私立です。州立ではありますが、カリフォルニア大学バークレー校、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)は非常に優秀です。しかしこれは例外でありまして、トップ10に入るアメリカの大学は、ほとんど私立です。そして授業料が高い。非常に高いです。
日本の大学は自由競争がないのです。明治維新のときに大学システムができましたが、そのときは、帝国大学が5~6校しかありませんでしたし、学生も数百人しかおりませんでした。
自由競争なき世界
今、私たちが持っているコンピューターもiPhoneもありませんでしたから、情報を独占して牛耳って、その情報を受けた若者たちが出てきてリーダーになっていきました。このシステムは、70年ほど前に完全に終わったのです。
ところが国立・県立・市立という形をつくって、そのまま延々とやっている。人口が減って県立などはほぼ定員割れ。そこに、普通のマーケット(市場)の値段をつけると、維持できないのです。まず私たちが日本で見直さなければいけないのは、「何で国立が?」ということ。国が牛耳る大学なんて冗談じゃない。
文科省は全部を牛耳っています。幼稚園から大学院まで、文科省の管轄で中央集権的な管理教育です。アメリカにはないシステムです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2015年8月下旬号「大学ランキング」− 3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。