From: 岡崎 匡史
研究室より
宇宙には、国境がありません。
「国境がない」ということは、国境を気にすることなく、自由に軍事的な活動もできるということです。しかも、宇宙であれば、攻撃を受けにくいというメリットもある。
現在、4400基以上もの人工衛星が地球の周りを回っています。もちろん、それ以上に「ゴミ」も宇宙に捨てられている。人間が活動すれば、必ずゴミがでます。
10センチ以下の小さなゴミを含めると、1億個以上のゴミがあると推定されている、、、そんななかで、私たちは、宇宙技術からどれほどの恩恵をうけているのでしょうか。
軍事技術とビジネス
通信衛星やGPSは、米ソ冷戦時代に開発された軍事技術です。インターネットも、敵の攻撃に「切断されない命令系統」の確立のために開発されました。
GPSの本来の目的でさえも、軍用の航空機や艦船を安全に運用し、軍隊を目的地に送り込んだり、巡航ミサイルを敵に誘導するために開発された。しかし、現在では自動車の運転に欠かせませんし、自動運転技術に高度なGPS機能は不可欠です。
さらには漁業にも、地球観測データは役立ちます。衛星で水温を調べて、魚の群れを予測。というのも、マグロは温かい水を好み、カツオは冷たい水を求めるので、水温データは漁業にも有用なのです。
衛星放送と検閲
宇宙の技術は、我々の日常生活に深く関与しているばかりか、国際世論を動かしたことさえあります。
テレビをはじめとするマスコミの情報は、人々の生活を大きく変化させます。ときには、権力者にとって放送してもらいたくない番組もある。ところが、共産主義や独裁国家のマスコミは、検閲の対象なのでコントロールを受けます。
しかし、この検閲を打ち破ったのが、衛星放送です。地上波の電波を妨害することはできますが、衛星からの電波をさえぎることは出来なかった。
当時、共産主義政権であった東ドイツの国民たちは、西側の情報を衛星放送を通じて受信。そして、東西の「格差」を目の当たりにした。これをきっかけにして、1989年の「ベルリンの壁崩壊」を引き起こす政治的動きが芽生えてきたのです。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・鈴木一人『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2016年)
・小塚荘一郎、佐藤雅彦編『宇宙ビジネスのための宇宙法入門』(有斐閣、2015年)
・星山隆『日本外交からみた宇宙』(作品社、2016年)
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。